買いやすいブランドになるか否かの鍵を握るのは、マクドナルドのような外食チェーンであれば店舗数やアクセスのよさなどの行き易さとデリバリーの利便性です。消費財や食品などの日常品であれば、スーパーやドラッグストア、コンビニといった小売店舗での配架率や店頭での視認性などです。昨今は、アプリやECサイトなどの利便性も重要です。アプリやECサイトの利便性など、デジタルな顧客接点でのユーザー体験を向上させることはマーケティング担当の介入余地が大きい一方、リアルな顧客接点での買いやすさの強化は一筋縄にはいきません。小売店で販売するメーカーであれば、配架率を高めるための営業力も必要です。店舗を運営するブランド...続きを読む が店舗数を増やすのは予算または時間などの制約があるため、ブランドの成長とともに地道に積み上げる必要があります。
MMMを機能させるために重要なのは「マーケティング戦略において期 「待する効果をどう定義し、それを検証するか」という要件の定義です。っまり、マーケティング・コミュニケーションの実務に必要な前提知識がない専門家に比べて、分析対象のビジネスの知識を身に着けており仮説を考えられる方がMMMを実装するのが成功の近道であることは間違いありません。
本書冒頭でコメントをいただいた、グローバルブランドのCMOである Jun Kaji氏は、自ら「Robyn」によるMMMやNBDモデルを使った需要予測を実装しています。「マーケティング投資をそもそもいくらにすべきか」という舵取りとなるMMMは、氏のようにCMOが自ら行うことが理想ですが、 現実的に日本でそのような方は非常に珍しい存在だと思います。しかし日本でMMMを機能させるためには、意思決定者と分析担当者双方が MMMのメリットだけでなく制約についても共通認識を持っておくことが重要です。MMMは分析上の制約も多く、それを知らない方の要求がそのまま実現することはほとんどありません。実際のプロジェクトでも、分析上の制約や活用できるデータの範囲内で実現可能な落としどころを見つけています。
【3章より再掲
書籍『ブランディングの科学 新市場開拓編」の第6章「リーチを拡大する(ジェニー・ロマニウク著)」では、スリーヒットセオリーは時代遅れの神話にすぎないとしています。重複接触を避けて、リーチを最大化することをメディアプランニングの第1の目的にすべきで、フリークエンシーを高めることは広告メディア費用の浪費につながるとしています。認知心理学とマーケティング学のメタ解析によって「単発の広告露出は効果的だが、間を置かない連続的な露出はそれに比べると効果は劣る」ことが証明されていることや、一定期間内では最初の広告露出が最大の売上効果を有することが先行研究から明らかであるとして、「良い広告は最初から効果を発揮し、そうでない広告は何回露出されても効果が薄い」と言及しています。
これは「何回リーチしても効かない広告は効かないが、効く広告は1回目のリーチから効き、カテゴリーバイヤーに持続的な影響を与えることができる。そして効果がもっとも高いのは1回目のリーチであるため、1回目で効果を出すクリエイティブを突き詰めてリーチの最大化を目指すことが重要。2回、3回と重複接触させることはコストの無駄につながるため、可能な限り避けるべき」という考えでした。リーチの最大化によって成功するためには、1回目で効果を出す広告になっていることが前提となります。そうするためには、効く広告クリエイティブと効かない広告のクリエイティブの効果の差をCPAやROASなどで数値化し、クリエイティブによる効果の違いを明確に把握するプロセスが必要でした。
MMMの制約
・細かい粒度での分析には向かない
・興味のある変数の効果を必ず推定できるものではない
・どんなに精度の高い分析モデルでも、一度の分析結果で効果を信じるわけにはいかない
・長期的な効果を考慮できない
POP
■カテゴリー類似化ポイント
消費者がブランドを選ぶ必要条件であるが、必ずしも十分条件ではない。 技術の発展、法整備、消費者トレンドなどによって時間とともに変化する。
■競争的類似化ポイント
競争相手の差別化ポイントを無効にするために作られる連想。競争相手が優位性を見出している領域で「引き分け」に持ち込み、別の領域での優勢を達成するためのもの。
■相反化類似化ポイント
当該ブランドにおけるプラスの連想から生じる、潜在的にマイナスの連想。 たとえばあるブランドが「低価格」であると同時に「最高品質」であると信じるのは難しい。
「他者理解」に必要なポイント
・正確な事実情報の把握 - 事実
・相手のリアルな人物像、価値観の想像、把握-洞察①
・「もし自分がその立場なら」「それには覚えがある」という自分事化 - 洞察②
・「覚えがある」気持ちへの共感 - 共感