生態学の基本的概念、生物多様性理解に必要な部分を網羅している。
知識は全くないが関心があるという層に、誤解や思い込みなく情報を提供している。
おそらく高校生以上なら理解できる。
肝になる論文を抑えていて、リファレンスからチェックができるという科学論文の形式に則っている。
この本の視点から(入門書とし
...続きを読むて)生態学を学ぶと、目的をはっきり持って必要な知識を身につけていける。
環境問題とは、古くは公害問題、近年では地球温暖化問題という切り口がメインストリームであると思うが、生物多様性の減少を中心に据えていることは、極めて高く評価できる。
人間活動(生息地の破壊、乱獲、外来生物、気候変動)は、可変の脅威であったはずだ。
人の影響を受けやすい特性を持つ種、マンモスの例、イースター島の教訓を具体例として、ヒトとの軋轢(生息地かぶり、乱獲、駆除)、生態学的特性(広い生息地、低いレジリエンス、攪乱への弱さ)を説明し、人間活動が多くの種の絶滅の脅威となっていることを紹介している。
可変の脅威であったはずの人間活動を今なんとかしなければ、第6の絶滅はこれまでにないほどの悲劇を生むだろう。
では、
なぜ、
守るのか?
ヒトの生存のためではなく、命そのものを尊重するため。
人類は生物多様性を理解するのが苦手。それが、人智を超えたハイパーオブジェクトだから。理解し続ける努力と理解が及ぶまでに失われてしまわないような努力が必要。そのために守る。
30年前に学んだ私の知識は、まだ使えそうだと思った。これをベースにアップデートを続けていけば、使い物になるかもしれない。なぜ守るのか、共感できるが、それだけで万人を説得するには弱いのかもしれない。
でも、学問ベースで体系的に生物多様性の喪失について訴える本書を手に取り、今世紀最大の危機である生物多様性の喪失の課題を解決していく一歩を、少しでも多くの人とともに踏み出したい。