♪燃やせ燃やせ 怒りを燃やせ~
「怒りの獣神」のテーマ曲が流れると、会場は一気にヒートアップ。
超満員の時も、冬の時代と呼ばれ閑古鳥が鳴いた時も。
平成の新日本プロレスには、獣神サンダー・ライガーがいた。
2020年1月4日・5日、東京ドーム大会2連戦での引退試合が発表された。
華やかな引
...続きを読む退ロードが始まるかと思いきや、一人の男が立ちはだかった。
「なに勝手に楽しく余生過ごそうとしてんだよ。テメーが生きる場所リングの中なんだよ!」
「プロレス王」にして「世界一性格の悪い男」--鈴木みのる。
乱入。
セコンドへの乱暴。
そして、マスクはぎ。
越えてはいけないラインを越えてきた鈴木に、ライガーの怒りが頂点に達する。
ライガーは自らマスクを剥ぎ、「鬼神」となって鈴木に襲いかかった。
そして迎えた最後の一騎打ち。舞台は両国国技館。
対ヘビー級仕様のバトルライガーに大歓声が沸き起こる。
両者、死力を尽くした闘いの軍配は鈴木に上がった。
大の字になって、立ち上がれないライガー。
憮然とした表情で、椅子を振る上げ再び襲いかかろうとした鈴木は、その椅子を投げ捨てる。
そして、正座をして、静かに座例。
両国国技館が泣いていた。
放送席の棚橋弘至、山崎一夫、ミラノコレクションA.T.が泣いていた。
ライブやオンデマンドで見ていた日本中、世界中のファンが泣いていた。
「結果的に鈴木が僕の大事なものを掘り起こしてくれたんですよ。鬼神やバトルライガーっていうライガーの歴史もそうだし、新日本のリングに上がるうえでいちばん大事な怒りの感情も目覚めさせてくれた」
素顔時代の山田恵一と鈴木実は、明日を夢見て野毛の道場で切磋琢磨し、汗と涙を流してきたのだ。
「鈴木には本当に感謝してますし、『ありがとな』の一言がすべてです」
東京ドームの引退試合には、憧れの藤波辰爾、永遠のライバル佐野直喜。
そしてIWGPジュニアヘビー級チャンピオンに返り咲いた高橋ヒロムが、見事に介錯。
翌1月6日の引退セレモニーの舞台は、大田区総合体育館。
創始者のアントニオ猪木からのメッセージも届いた。
新日本プロレス旗揚げの地で、獣神伝説は幕を閉じた。
これからも道場に住み、新弟子や若手選手たちの力になっていくという。
そして解説席では、新日本プロレスのファンとして誰よりも熱い声を上げていく。
世界の獣神のストーリーは、永遠に続いていく。
♪廃墟の中から立ち上がれ ライガー!