タイトルの「遺伝子は、変えられる」は、若干、強引な印象です。
遺伝子(DNA)について、以前は「完全に固定されたもので、一生を通じて変わらないもの」(環境からなどの影響により、突然変異が起こることはあるとしても)と捉えられていました。
が、遺伝子の中には、何かをきっかけとして、スイッチがオンになっ
...続きを読むたりオフになったりする部分もたくさんあり、この本では、そのことを「遺伝子は、変えられる」と言っています。
ちなみに、一卵性双生児に差が出るのは、環境の差異によるスイッチのオン・オフの違いの影響も大きいようです。
また、スイッチのオン・オフは、次の世代(子の世代)と、その次の世代(孫の世代)には遺伝することがあることがわかってきているようです。
それから、この本では、遺伝子の個性について、かなり丁寧に述べられています。
薬の効き方や適切な治療法などが人によって異なるのは、遺伝子の個性の影響、といった形で説明されています(これまでは、体質の違い、という説明をされることが多かったと思いますが、さらに突っ込んで、体質の原因となる遺伝子に着目することができる、ということかと)。
しかも、現在は、個人の遺伝子の解析技術も進んできているので、今後の投薬や治療は、遺伝子の個性に合わせた形で行われる可能性が高まってきています。
そうなると、治せる病気が増えることにはなりますが、これまでは知られていなかった病気が見つかることもあり、「遺伝子解析が進むならば、どんな病気も治せるようになる」とはいかないようです。
ヒトの遺伝子は、あまり多様性がないとは言われていますが、それでも、80億人いれば、80億パターンあるわけで、それらをすべて調べつくすのは、今はまだ難しいようです(将来的なことはわかりませんが)。
この本では、遺伝子の突然変異を中心に、いろんな事例が紹介されていますが、個人的には、「性染色体がXXなのに男になるケースが、10億分の1ぐらいある」という話が、とても印象に残りました。
かなりレアな話なので、高校以下の教科書に載ることはないと思いますが、今後の生殖医療を考える上では、かなり興味深い事象ではないかと思っています。