数学というのは、きっちり答えが出る。「恋愛」とは正反対に思えるが、数学の切れ味はやはりスゴイ。
本書は数学を利用することで、恋愛の勝者になるための基本戦略を見つけようとするものだ。もとはTEDトークということで、すこぶるわかりやすいものだ。
第1章はフェルミ推定によって、恋人ができるチャンスを
...続きを読む計測する。「恋人にしたい人」の条件を1つ加えるたびに、ふさわしい人がどんどん減っていって、しまいには〈銀河系の知的異星人文明の数〉よりずっと少なくなってしまう。どうしても外せない条件以外はゆるめるのが、恋人をつくるためのファーストステップということになる。
第2章は自分よりちょっと不細工な友人が、相対的に自分を美しく見せてくれる「囮効果」について。第3章は「待ち」か「攻め」か、受け身でいるか積極的に出るかの戦略をゲーム理論によって明らかにする。(あきらかに攻めのほうが、上位の相手をゲットできる)。第4章はオンラインデートでどうやって双方をくっつけるのかというマッチング技術の数学について。意外にも「欠点」があるプロフィール(写真も含む)ほうが魅力的に見えるのだということが証明される。〈あなたのことをきれいだと思ってくれる人が多少ともいるなら、その他の人には醜いと思われたほうが、誰からもそこそこかわいいと思われるよりもずっといいのです〉第5章はゲーム理論をもとにした交際術について。第6章はセックスが「正規分布」ではなく「べき分布」に従うこといついて。第7章は、最高の相手をみつけるための戦略=何人目に交際した人と結婚すべきか、何人目までは振るべきか、について。第8章は結婚式の席次の決め方、第9章は夫婦げんかのこつについて(小さなことでもネガティブをはき出すほうが、がまんしてため込むよりうまくいく)。
きけば「なーんだ」という結論でも、そこに数学的な裏付けがあるとなると、やはり効き目が違ってくる。恋愛がうまくいくかどうかはともかくとして、学問を現実にあてはめていくおもしろさについては、なかなかたいした1冊だ。