風島ゆうの作品一覧
「風島ゆう」の「祇園ろおじ 香り茶寮の推理帖」「零の記憶」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「風島ゆう」の「祇園ろおじ 香り茶寮の推理帖」「零の記憶」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ラノベ
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小説・文芸
ラノベ
Posted by ブクログ
何年かぶりの再読。
(再読のために改めて買い直した)
再読だから展開は分かっているのに、それでも号泣した。
嗚咽を噛み殺しながらの読書になった。
別の作品でも書いたが、風島先生は内面を掘り下げて書くのが上手いと本当に思う。
しかもそのキャラだって本当は見せたくない本性の部分を。
描かれたら痛いであろう弱い部分を。
人に興味が持てず、女性を使い捨てているようなロクデナシ、鈴宮先生だって、零ちゃんにかかれば暴かれたくなかったであろう内面が掘り下げられてしまう。
この洞察力、というかこの感受性。
彼女は霊の記憶が見えてしまう目になってしまったゆえに、ただでさえその世界に引っ張られて自分を見失いがちであるのに、人の隠していた内面を感じ取ってしまう部分もあるので心配になってしまう。
彼女の優しさではあるが、その優しさが外界からの圧力で潰されはしないかと。
負けてしまわないかと。
そりゃ弟くんも心配になる。
自分では彼女に真の意味では寄り添えないから余計に彼にしてみればもどかしいだろう。
でも、そんな零ちゃんだからこそ、あの鈴宮先生だって本来の自分を掘り起こされた。
(本人に本来の自分が掘り起こされている自覚があるかは分からないが、かつての自分からは想像できないほど零ちゃんに振り回されている)
疎遠になっていた親友だって、結局のところは彼女を愛していた。
誰よりも感受性豊かで、素直で、壊れやすいだろうに、人のために自分を偽って、それでいて誰もいないところで傷ついているような彼女だからこそ。
こういうキャラクターを描くのが本当に上手だとしみじみと思う。
話は親友の死の真相を鈴宮先生の協力も得ながら探っていくもの。
その中で暴かれるのは、本当にかなりえげつないもの。
このレーベルから出された作品にしては非常に重いものではないだろうか。
親友の「死」を扱っている時点で十分重いのだが、彼女が抱えてた問題も十代の少女が一人で背負い込むにはあまりに重いし、彼女を死に追いやってしまった「真犯人」の正体も、その理由も、その人が抱えていたものも非常に重い。
キャラクターに対して一切の容赦がない。
ないからこそ、他の綺麗な部分が、尊いものがより輝くけれども。
でも結局零ちゃんは唯一無二の親友を物理的に失うことになる。
(精神面ではきっと繋がっているだろうが)
この真相が暴かれるシーンは本当に何度読んでも泣ける。
そして何年かぶりの再読でようやく、隠されていたメッセージに気付く。
もう分かった瞬間に、涙をこらえることができなかった。
何て、何てものを残してくれたんだ。
確かに違和感はあったのだが、これが紙媒体ならではの仕掛けだっただろう。
ああ、零ちゃんは本当に本当に愛されていたなと、それが分かって涙が止まらなかった。
失ったものは本当に多い。
しかも真相を手に入れるまでに、零ちゃんは身体的にも精神的にもいっぱい傷ついた。
(そして、その度に鈴宮先生の精神もすり減る。過保護ゆえ)
でも、その中で零ちゃんも、そして鈴宮先生も唯一無二の相手に出会えたのではないかなと思う。
守ってあげたい相手と、誰よりも愛されたいことを見抜いてしまった相手と。
傍から見たら凸凹コンビかもしれないが、お互いもう手を離せない相手になったのではないだろうか。
辛い真相ではあったけれど、結ばれた縁もある。
その縁は、素直に祝福したいとそう思う。
Posted by ブクログ
病気には完治できるものと、治療法すら分からないものがある。
放置しておけば、死に至る病もある。
それは現実世界でも、フィクションでも、そして「まぼろし病」なる病が存在するこの物語でも同じだ。
いくらお医者さまに診ていただいても、そのお医者さまが最後の砦だったとしても、救えるものは救えるし、そして救えないものは救えない。
そして、患者の意志を覆すことは、お医者さまでも無理なことがある。
「まぼろし病」は、まるで物語のような病だ。
体から星屑のように光がこぼれ落ちていく病。
単音が聞き取れず、ハーモニーでないと音が聞き取れなくなる病。
ある言葉を口にしようとすると泡になってしまう病。
そして、主人公の結のトラウマとなった美しくも哀しい秋の病など。
事実、物語の原典になったのではという説や日本の八百万の神に絡めた解釈なども紹介されていて、その点も興味深い。
序盤に登場する病は対処法が分かっているので完治ができる。
中には実現が難しいものもあったが、結や患者の友たちの努力が実を結んで完治に至る。
だから、どの病も治せるのだと、錯覚してしまった。
そこからの、対処法は分かっていても、救われない病の登場。
これには本当に衝撃を受けた。
患者に肩入れしがちな結は救おうとした(臨床心理士として患者に入れ込みすぎるのは致命的だが、彼女の長所ではある)
ただ彼女の上司であり屈指の「まぼろし病」専門医の天雫はそれをエゴだと切って捨てた。
大切な人の思いを犠牲にして自身の命を選ぶか、大切な人をその思いごと大事にする代わりに自身の命を諦めるか、それは患者本人が選ぶことだと。
そんな苦しい命の選択があっていいのかと。
現実世界も、そしてこの作品の世界も、時々われわれに優しくない。
唯一の救いは、それでも患者はこの世界を「美しい」と称したこと。
そして、この病を始め、「まぼろし病」は本当に夢の世界のように美しい病状が多いということ。
この病のラストも美しくて、それはもう美しくて、それだけで嗚咽が漏れた。
そんな病と対峙した傷が塞がらぬうちに、結が相対することになるのが、彼女のトラウマにもなった病。
この病も感嘆ものの美しさだが、ここでようやく奇跡が起きる。
起きてくれた。
彼女だからこそ、気付けたことがあった。
きっと彼女が出会うべき患者だったのだろうと思う。
必然の縁を感じた。
この病の対処法、そして症例報告が少なかった理由なども深く練られていて、驚かされた。
惜しむらくは、あれだけ「まぼろし病」に詳しい天雫先生のバックボーンをもっと知ることができるエピソードが欲しかった点。
何故あれだけ詳しくなったのか。
コミュ障なのに、人と接することが苦手な癖に(その割に結にはポンポンと毒舌を吐く)まるで「まぼろし科」にしか居場所がないかのように居座っている理由が気になった。
もしかして彼も結のように過去に「まぼろし病」に関わるトラウマ的何かがあったのだろうか。
などと、色々と妄想は広がる。
今回は結のトラウマ克服までの物語だったが、いつか彼のことも分かるエピソードが形になる日が来て欲しいなと思う。
Posted by ブクログ
粗筋に惹かれて手に取ったので、作者さまが『零の記憶』シリーズの方だと後から知りびっくり。
『零の記憶』好きだったので、別レーベルでまたお会いできるとは思わず。
これは嬉しい再会!
日本茶を楽しめるカフェを舞台にした日常ミステリもので、帯には「路地から出られない探偵」とあったが、彼は絶対的な「探偵」ではないなと思った。
大体は彼が謎解きをするのだが、彼は一から十全て分かる訳でもないし、彼がまるっと全てを解決する訳でもない。
この作品、探偵役が必ず彼だとは限らない。
彼に救われた少女、萌が気付いてくれたり、彼女が推理をして見せたり。
彼の兄がお茶の力で心を癒したり、弟をアシストしたりする。
この三人が揃って初めて「探偵」として謎解きが成立する話かなと思った。
誰か一人でも欠けたら、どこかで停滞してしまう。
そんな危うい中で不器用ながら、失敗もしながら、光を掴もうともがいて、どうにか手を伸ばして引き寄せる、そんな探偵で、そんな謎解き。
特に「路地から出られない」という謎は、探偵役となっている彼自身では解決できない話。
そのことに自分自身で苦しんでいて、どうにかしたいと思っていても、どうにもならない。
探偵は自分自身を救わない。
そんな彼に光を差してくれるのが萌だ。
萌がいなければ、きっと彼はそのきっかけすら掴めずにいた。
そういう意味で、彼は絶対的な「探偵」にはなり得ない。
弱い部分も抱えた、人間臭い少年である。
彼以外にも、心に何かを抱えた人たちが多数登場するお話。
『零の記憶』の時にも思ったけれど、作者さまは心の奥のネガティブな、普通は表に出したくない部分を描くのが上手い方だと思う。
掘り下げが丁寧で、かつそこまで曝け出すかと心配になるほど。
何しろ路地を出られない彼が抱えている問題が特に重いので。
(故に、この話で完全解決にはならない。でも希望の見えるラストで、それがまた強烈に記憶に残る)
だからどの話も心が震える。
特に泣けたのが、隠された暗号の話。
あれは展開もずるいし、内容もずるいしで、読みながら号泣しそうになった。
ああいう展開に自分は非常に弱い。
何度読んでも泣く気がする。
メインの三人は京都人ではないので、京都弁を喋らないが(探偵役を仰せつかっている彼は時折無意識に京都弁が出る、そこがまた可愛い)他のキャラは京都弁なので、京都の雰囲気も十分味わえる。
住民の人たちがまたいい人たちなのだ(そして、そこもまた路地から出られない彼を救うカギになる)
出てくるお茶の蘊蓄も楽しく、萌が意外に食レポ上手なので、お茶がどれも美味しそうでたまらない。
そういう意味でもポイント高いし、前述通りキャラの掘り下げも丁寧なので、より深みを増しているお話。
冒頭とラストが、ずっと見守ってきたお兄ちゃん目線なのがまたにくい演出。
一杯のお茶から味以外に伝わるものも、そして救えるものもあるのだと信じられるお話だった。