■全体では98%以上の子供たちが高校に進学する中で生活保護世帯では90%程度に留まっていることは,経済的格差が教育格差につながっていることを示唆している。
・高等学校等中退率を見ても全世帯が1.7%であるのに対して,生活保護世帯はその3倍の5.3%
・大学等進学率でみても生活保護世帯の子供たちは全世
...続きを読む帯の半分以下にとどまっている
・進学率や中退率が現状のまま放置される,つまり学歴が低下し就業形態が悪化すると所得が減少し,税収や社会保険料収入も減少してしまうとともに,無業者の増加により生活保護などの公的支出は増加する
■子供の貧困は何をもたらすのか。
・男性の場合中学卒だと40歳時点の就業率は76.6%に過ぎないが,高校卒だと89.9%にまで上昇。女性の場合も中学卒の場合の40歳時点の就業率は56.4%だが高校卒だと67.7%
・中学卒の男性の場合,正規雇用なのは60.5%に留まるが,大学・大学院卒だと85.6%が正規雇用。女性についても中学卒だと40歳時点の正規雇用者は24.4%だが大学・大学院卒だと56.3%まで上昇
・大学・大学院卒男性の40歳時点の年収は676万円だが非正規社員だと387万円に留まる。女性についても大学・大学院卒の正社員であれば年収は40歳時点で544万円だが非正規社員だと313万円に留まる
・学歴間の賃金格差は正社員において特に大きく,正社員の男性の場合,中学卒だと年収は439万円だが大学・大学院卒だと676万円であり,女性の場合も中学卒だと316万円だが大学・大学院卒だと544万円
■教育格差はトリプルパンチで経済格差を生み出している。
・第一に就業率,第二に雇用形態,第三に所得
■非貧困世帯出身の男性の場合,最終学歴が中卒となるのはわずか4.6%であるが,生活保護世帯の場合,四分の一に近い23.8%が中卒であり非貧困世帯の5倍以上である。
・子供の貧困が教育格差を生み,社会に出てからの経済格差を生み出し,貧困を再生産させていることが分かる
■社会的損失① 大卒は半減し中卒は4倍増に
・中卒者3万2000人のうち二万人は高校中退によるもの
・貧困世帯の場合経済的な要因や家族の要因により中退率が高い
■社会的損失② 非正規社員や無業者が1割増加
■社会的損失③ 一人当たりの生涯所得が1,600万円減少
・毎年の所得に換算すると280万円程度
■社会的損失④ 一人当たりの財政収入が600万円減少
・個人の所得が減少すれば税収や社会保険料収入が減少
・無業者が増加すれば生活保護等の社会保障給付が増加
・子供の貧困が改善されれば毎年85万円程度の財政収入が増え,生涯で3800万円もの財政的なプラスを生み出す
■社会的損失⑤ 所得が40兆円超,財政収入が16兆円失われる
・子供の貧困を放置することによりスカイツリーの総事業費650億円に匹敵する所得が毎年失われることになる
・国家財政収入への影響は更に深刻で子供の貧困の放置により財政収入が15%以上減少することになる
■自立する力の要素① お金
■自立する力の要素② 学力
■自立する力の要素③ 非認知能力
・ペリー就学前計画という研究によれば学力以外の要因が高校卒業率を高めていることが明らかとなったが,この学力以外の要因とは「非認知能力」と呼ばれ,意欲,自制心,やり抜く力,社会性など,国語・算数・理科・社会といった認知能力以外のものを指す
・現行学習指導要領で掲げられる「生きる力」とも重なる部分が多い概念
・乳児期から学童期まで発達に必要な要素は「基本的信頼」「自律性」「積極性・自主性」「勤勉性」などの非認知能力
■幼児教育は生涯にわたって大きなインパクトをもたらす
・幼児期に受けた教育プログラムの効果は,その期間の学力を向上させるだけでなく,長期的な進学率にまでプラスの影響を及ぼす
■足立区の「子供の健康・生活実態調査(2015年)」結果から
①生活困難世帯では,虫歯の本数が多く,予防接種(自己負担なし)を受けていない割合が高い傾向にある
②運動や読書週間により生活困難な状況においても逆境を乗り越える力を培える可能性がみられる
③困った時に保護者に相談できる相手がいると,子供の健康に及ぼす生活困難の影響を軽減できる可能性がある
④子供を取り巻く家庭環境や生活習慣を変えていくことで,子供の貧困の連鎖を軽減できる可能性がある