半藤末利子の作品一覧
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Posted by ブクログ
いつもどおりの辛口エッセイで、安心する。なかでも辛口が冴えているのは、漱石のドラマをめぐるNHKについての2つのエッセイ。あとがきには、本書が「毎度おなじみちり紙交換のようなもの」とある。自分にも辛口だ。
もちろん、烏合のカラスや家の解体工事見物、雨宮塔子さんや竹下景子さん一家が登場する日常のエッセイもある。でも、今回目立つのは、ご近所や知り合いで亡くなる人をめぐるエピソード。そして最後は、夫 半藤一利氏のことを綴ったエッセイ。これが本書のハイライトだろう。
本書を読んでいた時ちょうど、和服姿の半藤末利子さんが「徹子の部屋」に出ていた。祖父の漱石に始まり、最後は一利氏のことを話していた。一利氏とは、戦後すぐの時期に疎開先の長岡で出会った。末利子さん12歳、一利氏17歳。その6年後、ふたりは東京で再会する。一利氏いわく、「サナギがチョウに変わっていた」。なんという殺し文句。その数年後、一利氏は末利子さんにプロポーズした。
Posted by ブクログ
2021年に亡くなった夫の半藤一利氏が、亡くなる2年くらい前に、「あなた(末利子)の今まで書いてきたエッセイの中から、夏目家のことを書いた作品だけを選んで1冊にまとめてみたら面白いのではないか」と勧めてくれたことがきっかけで出来上がった1冊。
半藤一利氏の想いと、その言葉を遺言と思って大切にあたため、ついに叶えた末利子さん自身の想いが詰まっている。
末利子さんは、夏目漱石の孫に当たるが、漱石は大正5年に亡くなっており、末利子さんは昭和10年の生まれだから、直接には漱石を知らない。
夏目家のエピソードの多くは、漱石の長女である、母・筆子さんから聞かされた話や、親戚の人たちとのお付き合いの中で積極的に「ネタ集め」に努めて書かれた物である。
そして、漱石の晩年の弟子であり、筆子の夫となって、大黒柱を失った夏目家の長男代わりを務めた、父の松岡譲(まつおか ゆずる)氏をとても尊敬している事もうかがわれ、「それから」の部分に当然のことながら、松岡家が占める割合も多い。
以前、末利子氏の『漱石の長襦袢』を読んだことがあり、その中にも、漱石の死後に、古参の弟子達と漱石の遺族の間に確執があったことが書かれていた。
なにしろ「弟子たち」は文筆家であったから、漱石夫人の鏡子のことをひどい悪妻であると書いてはあちこちに発表し、それが世間の定説のようになってしまったり、筆子は自分と結婚する物だと思い込んでいた久米正雄が、松岡譲を略奪者のように悪者に仕立て上げた小説を発表したおかげで、娘の末利子まで、世間から色眼鏡で見られたりした事もあったようだ。
そういった、一方的なやられっぱなしがひじょうに悔しく、鏡子も筆子も反論という事をしなかったから、自分が世間からの不当な評価を覆さなくてはという強い思いがあったと思う。
そういった理由で、鏡子夫人がいかに漱石にとって頼もしい妻であったか、父・松岡譲がいかに素晴らしい人物であったかという記述が繰り返し出てくる。
熊本市にある「夏目漱石記念館」を訪問したときにちょうど高校生の団体が入って来て、館長さんが「この方は夏目漱石のお孫さんです」と紹介したものだから、末利子氏はすっかり高校生たちの見せ物になってしまったというエピソードがユーモラスだった。
やはり、父母両方から文学者の血を引いているせいだろうか、とても読みやすかった。