フィクションと思って手に取ったら、まさかの実在の薬局のお話だった。本当に大変だと思うけど、こうやって利益追求でなく、心や身体を支えること、守ることを医療人として指名にされている方がいること、本当に救われるし、頭が下がる。そして、それを表に出していないのがまたいい。いい意味でゆるいと言うか、身構えない
...続きを読むで行ける空気感が本越しにも伝わってきた。
p.88 「高校の時からかな、心と体のことを気楽に相談できる場所って、絶対必要だよなとはずっと思ってたんですよ。みんなが相談しやすいのは薬局かな。薬局みたいなところに、いつも相談できる同じ人がいればいいのにな」
p.109 確かに椅子があれば、ない時に比べて長い出来るようになる気持ちはわかる。お医者さんにお伝えられなかった、ちょっとしたことを、喋ってみようかなと言う気持ちになるかもしれない。「まぁちょっと座りなよ」と言える。立ったままの状態でどうしたのと言われたところで、実は子とはいかない。道端にある占いの店にも、教会の告解部屋(いわゆる懺悔室)にも、椅子がある。人間、立ったままでは、体も揺れるし、気持ちってしまうし、なかなか踏み込んだ話ができないだろう。だから、中沢さんは、座って向かい合うことができる、ちょっと隔離されたような、こっそり、そして、じっくり話せるスペースを作ったそうだ。こうした小さな工夫の積み重ねが、落ち着ける場所、心の武装を解ける場所を作り上げてきたのだろう。
ちなみに、もう一つ、メンタルバランスを崩した人は多くやってくるだろうと見越して工夫したものがある。壁紙の色を柔らかいピンクにしたことだ。肌色と桃色の間のような天川色。これは精神的に安心感のある色、なんだそう「ともかく、ここに来れば安心と思ってもらえたら、嬉しいです」
p.116 そんな顧客のニーズに応えた、かゆいところに手が届く商品選定のだ。バラ売りすることで、気楽に購入でき、きっちりと否認する人が増えるのならば、社会的に有意義な商売だと言えるだろう。
p.127 「例えば、キャバ嬢の子が、処方箋の順番待ちをしながら電話誰かと喧嘩をしていたとします。内容的に、ホストの彼氏と揉めているのだなとわかった。でもそういう時も、ダイレクトに彼氏と喧嘩したの?とは聞かない。ただ何かあったって軽く尋ねる位にする。そこで、相手が、ぼかしたり話したくなさそうだったら、それ以上深掘りしません。逆に話したそうにしたら…、その時は、相手が言葉にするのを待ちます」
p.131 「夜の仕事の人で多いのは、個人事業主が入る国民健康保険で、かつ扶養家族。20代半ばの人でこれに該当していたら夜の仕事かなとあたりをつけます。会社員だと社会保険の本人になりますから。後は保険者番号の左端の数字ですね。中小企業だと01006 =組合がある所なので、しっかりした大企業が多いとか、いろんな情報が得られます。その他にも、番号欄に書かれた数字が1だと、創業者、といったこともわかるのだそうだ」
p.150 弱っていない、困りごとを抱えていない相手には、きちんと対応する。しかし、薬局内で人と接する時は、あえて言葉を崩す。この場で必要とされるためには、言葉から変えようと言う、明確な意識の表れなのだと言う。
p.171 「患者とは、心を串刺しにされているもののことで、看護とは、手と目を使ってみることだ」としばしば言われる。