何となく題名に惹かれたという程度で済まないような、濃密な読書時間を本書と共に過ごすことになったような気がする。非常に読み応えが在る労作であるように思う。
漠然と思うのは「戦後」というように言う場合、「1945年8月」の以前と少し「切り離されている?」ということと、「既に数十年経つ中、漠然と一括りのよ
...続きを読むうに?」というようなことだ。今や「戦後」と呼ばれる「1945年8月」の後だけでも75年も経った。これは「明治元年から昭和20年」という期間の年月と既に大差が無い。だから所謂「戦後」にも既に様々な経過、変遷というモノが在るということになる。
本書は、「“戦後民主主義”という、時々聞く用語は一体何なのか?」ということを底辺の軸に据えながら、1945年から極々近年に至るまでの長い期間に亘る、社会の様子を伝える思潮、映画や文芸作品、話題になった論、政治の動き、注目された事象等々を拾い上げて、「“戦後”と呼ばれている期間の日本国という社会の変遷」を織り上げているような労作であると思う。
本書に取上げられている出来事等に関しては、「XX歳位であった頃か…」と自身の記憶の隅に引っ掛かっているような事柄を論じている例が多い。更に少し注目された論を展開したという人達に関する言及を視れば、自身が学生であったような頃に「〇〇で有名だった人」と紹介され、色々と発言しているのを何かで見聞したような記憶が在る人物が沢山在る。
本書を読むと「半ば以上、自身の人生と重なっている、または歩んだ時間を“歴史”として見詰める」というような、些か不思議な経験をすることになるような気がする。
「好い」と思うモノを護ろうとするばかりでも「好くない」は残る。「好くない」を正そうとするばかりでも「好い」を捨てざるを得なくなってしまうかもしれない。既に「戦後」と括り得る時期が「明治・大正から昭和20年頃へ」という程度の期間になってしまっている中、知り、考えるべきことも多くなっている。
本書は“現代社会史”というようなことで、若い人達が学ぶ場合の格好の材料になりそうだ。自身も「若い人達が…」等と綴ってしまうような年代になってしまったと苦笑も漏れるのだが、当然ながら自身の世代にとっても興味深い一冊である。
本書は広く御薦めしたい労作だ!!