これほどまでに読み手の感情の置き場所を迷わせる本があるだろうか。
純粋に本の感想を書くと、とにかく文章が美しい。
この文を本当に本人が書いたのなら相当読書家だし、頭も良い。
ライターが代わりに書いたのかと思ったけど、文章の随所随所に独特の自己陶酔感が滲み出てるから、ご本人が書いたんだなと思ってる。
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かなり重い事件だけど、それでもこの本が地獄みたいに重くないのは、作者が周囲の人間を非常に肯定的に受け取ってるからだろう。
実際はわからないけど、自分を支えた人間を愛している事が伝わってくる。この本の中でもこれが本当に救い。
もう少しセンシティブな内容に触れるなら、卑劣な殺人を犯した人間がこの様な本を出す事自体やはり良い様には思えないし、何より作者が本当に反省しているのか疑問に思う点が多々ある。
ただ殺人者が贖罪に塗れた人生を送る事を、前向きに生きて行くのを否定する事を、誰にも強要出来ない。強要したって意味がない。
その辺が読み進めながら凄い揺れ動いて、一層被害者が受けた傷、加害者のこれからの人生を考えてしまった。
良い本に出会えたとは言えない。
でも読めて良かったし、ほんとに色々考えさせられた。