島崎謙治の作品一覧
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ユーザーレビュー
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医療政策といった分野の知識・理解を深めたいと思いながらも、読み手の自分のアホさもあって、この分野の本ってなかなかとっつきづらく読み進むのが難しいものが多い。ところがこの本はかなり読みやすかった。
日本が誇る(?)国民皆保険として、医療保険制度を軸にこれまでをわかりやすく解説してくれ、そしてこの先の案
...続きを読むを紹介してくれている。状況を解説するだけで予防線を張るかのように持論を披露してくれない本も多いけど、一歩踏み込んで著者なりの今後の方向性をしっかりと書いてくれているのも、見通しが利かない身としては視点が一つ得られるようでよい。
医療や介護の先行きってなかなか難しいものだし、財務省や経産省やらの経済発展ばかりに目を向け社会保障や健康・医療なんか二の次的な動きが目立ち暗澹たる気持ちにもなるし、国民皆保険も60年ほどで危うくなってきた感もあるけど、まだまだ保険制度をベースに現実と先行きを精緻に見通すことでできることはあるという希望のようなものも感じられる一冊だと思う。
Posted by ブクログ
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『医療政策を問いなおす~国民皆保険の未来~』 島崎謙治
医療政策について、財源論、他国との制度の比較、現在の日本の医療政策の成立背景等がよくわかる。
個人的な興味関心は、職域医療政策である健康保険組合についてであるが、健康保険組合を論じる上では、そもそもの日本全体の制度についても理解が必要であると
...続きを読む感じ、本書を手に取った。
日本の医療政策として、社会保険方式(⇔租税方式)で国民皆保険(⇔アメリカのような一部保険)を実現しており、医療の提供においては現物給付方式(⇔償還払い方式)によって成り立っているということについて、それぞれの代替案や他国の制度の形を示しつつ、なぜそのような仕組みを取っているのかが詳説されている。個人的には、どうしても保険業界にいると、財源と給付について目が行きがちであったが、本書では現物給付方式を成立させている医療機関の供給サイドの仕組みや、現物給付方式にすることで民間医療機関が多いにもかかわらず、それらの経営原資を診療報酬に依存させ、実質的には政策誘導がしやすい形にしている(なっている)等の観点は新鮮であった。
また、社会保険方式の運営は、保険主義とイコールではないことなども、記載があったことは納得感がある。保険業界の身からすると、現代の保険商品のほとんどは応リスク負担保険料、つまり、一定のリスクに応じてその分保険料を負担するリスク細分化の商品設計になっているが、日本の社会保険は応能負担であり、個人のリスクにかかわらず、負担できる所得の有無によって、保険料が決定しているという点に、ちぐはぐさを感じざるを得ないが、ある意味、国民皆保険を達成するための方便として完璧な保険主義の遂行は不可能と認識しながらも運営でカバーしているという実態を改めて認識できた。
そうした中で、応リスク負担であるべきところを、応能負担にしていることにより、低リスク者から、高リスク者へ、高所得者から低所得者への所得移転がされることを理解した上で、そのような所得移転が容認されやすい一定顔の見える共同体として、カイシャ(職域)とムラ(地域)が現在の健康保険の基礎となったという点も、合点がいく。
一方で、高度経済成長期かつ人口ボーナスのある中で設計された日本の社会保障制度のほとんどが、人口減少社会と定常経済により、機能不全に陥っていることについて、課題点として挙げている。
そもそも、社会保険といいつつも、給付財源のうち保険料で賄われているのは5割であり、4割が公費、患者負担が1割となっているのは、保険業界の者か見ると明らかに保険制度とは言えないシロモノである。そして、もっと言えば公費で賄われているものの財源には、国債発行によるものも多くあり、明らかな給付過多である。後期高齢者の患者給付の異常な少なさ(十分な所得があるにもかかわらず、負担割合が少ないケースも散見されること)や、健康保険組合でも、後期高齢者医療制度への上納金が4割程度を占める等、世代間の格差が甚だしいというのが現状である。少子高齢化により、このままの仕組みであれば、社会保障制度の給付の財源割合はより、公費によって行くことも考えられる。社会保険方式を取りつつも、実態は税財源になりつつあるということが述べられている。その上でも、税財源確保のための消費税引き上げが急務であることなどの、政策提言も行われている。
本書の締めとして、そのような状況の中で、今以上に世代間格差が加速する前に、現状分析の下で理性的に議論することが求められる。社会保障制度は、寄木細工のように複雑な構造であり、部分最適が全体最適を意味しない。そのような中で、データを交えて真剣に議論するような土壌として、民主主義の成熟が欠かせないことが述べられており、そこに私も合意する。
Posted by ブクログ
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日本の医療制度、政策の分析が細かくされ、かつ、論点や課題が的確にまとめられており、わかりやすかった。
Posted by ブクログ
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まじめな本。医療制度について概観するにはよいし、著者の意見についてもごもっとも
75歳以上:後期高齢者医療制度
75歳未満:被用者保険と国民健康保険の二本立て。被用者保険の保険者としては、大企業の被用者が加入する健康保険組合、中小企業の被用者が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)、公務員らが加入
...続きを読むする共済組合がある。
国民健康保険は75歳未満で被用者保険の対象でない者が対象で、住所地の市町村が運営する国民健康保険に加入する。
生活保護の受給者は国民健康保険の適用が除外されるが必要な医療は生活保護法に基づく医療扶助でカバーされる
すなわち、日本国民は全員、いずれかの医療保険制度に強制的に加入している
2012年度の国民医療費39兆円。保険料が19兆円(49%),公費15兆円(39%、うち国庫は10兆円で26%)、患者負担5兆円(13%)
比較的健康で所得も高い者が加入している健康保険組合や共済組合に対しては公費の投入は行なわれていない。協会けんぽに対しては邦が給付費(自己負担を除いた部分をいう)の16.4%を補助している。国民健康保険は5割が公費で負担されている(国庫41%、都道府県9%)
2018年度からは都道府県が国保の運営の責任主体となる。毎年3400億円の公費が国から投入される。公費の投入によって所得水準や年齢構成の差による医療費の違いを調整するが、医療供給が過剰なための医療費高騰などについては保険料の差として反映されるだろう
後期高齢者は、1割が自己負担。5割が公費。被用者保険や国民健康保険からの支援金が4割
負担は三割だが、義務教育就学前の者は2割、70−74は2割(ただし、2014.3末までに70歳になっている者は特別措置として1割に据え置き)。75歳以上は1割。ただし70歳以上であっても現役並み所得者は3割負担。
1960年代半ばに岩手県沢内村で老人医療費の無料化が試行された。70年代に全国に広まり、72年に国の制度として実施された。これが過剰受診や社会的入院の増加を招いたとされる。平均在院日数も70年代になってから急伸し、介護や福祉が受け持つべき領域を医療がカバーすることになった。2002年にようやく自己負担1割になった。
2012時点で65歳以上は人口の24%だが医療費の57%を占めている
医療保険は社会保険なので、低リスク者から持病のある高リスク者へ、(定率負担なので)高所得者から低所得者へ、所得移転が起きている
延命治療を望む人の割合は1割程度だが、家族としての意見になると2割になってしまう。はっきりしているうちにリビングウィルについて話し合っていないため、家族としては重い決定を避けたがることになる。
医学部の増員は暫定処置ということになっており、2019年に見直される予定。2008以降の増員の効果がこれから出てくるのと、人口減少によって2030には医療需要は飽和するため、医師は余ってくるだろう
混合診療について。療養担当規則では保険医は厚労大臣が定めた医薬品以外の薬物を施用・処方できないことになっているし費用負担を求めることもできない。保険の考え方としては、一連の医療サービスは不可分一体のものであり、個別に切り分けて給付対象とすることは好ましくない。つまり保険で認められている診療に保険外のものを組み合わせた時点で保険診療の行為は給付対象にならない。(2011の最高裁判決で決着済み)
現在は混合診療が禁止されているからこそ会社としては保険収載されるように多額の治験費を投入しているし、薬価に不満があっても受け入れている。しかし混合診療が解禁されたら特に癌など患者が多額の治療費をすすんで払うような分野ではわざわざ保険収載を目指そうとしなくなるだろう。価格は高止まりし、利用できる者が限られることになる。
Posted by ブクログ
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