新日鐵入社、現・新日鐵住金ソリューションズ人事部長の中澤二朗(1951-)による仕事論。
【構成】
序 章 留学生の「働くなぜ」
第1章 仕事の窓-「働くなぜ」を解き明かす鍵
第2章 なぜ人は仕事を嫌い、仕事に希望を託すのか-「仕事の窓」の4象限
第3章 なぜ石の上に三年、下積み十年-「仕事の窓」
...続きを読むのからくり
第4章 なぜ「就職」ではなく「就社」か-長期観察・長期育成・長期雇用
第5章 なぜ仕事に「前向き」になれないのか-職業観の形成
終 章 やるべきことを、やりたいことに-命の使い方
人事屋という生き物は口だけで生きているので、語りたがり屋が多い。
そして、営業本と並んで「仕事とは論」をたくさん世に送り出している。
そして多くの場合は、現状を緻密に分析するというよりは自身の経験に即して主観的な感想を垂れ流している。あるいは、ベンチャー起業者が手がけるような夢と希望ばかりの語りは、その対局にあるが主観論であることに違いはない。
そこにいくと、本書はそれら類書よりは読む価値がある。
やたらと根性論や浪花節を強調するわけでもなく、仕事は基本的に地味で単調だし、地道に続けていきながら見えてくるものがあるんだよと説かれる。
当たり前と言えば当たり前であり、「何を今さら」と思う人も多いと思うが
現状を認知して、地に足をつけるところから議論をスタートできていない人間がいる中ではそれも必要なことだろう。
思い出話的な要素もあるし、どこまでいっても大手鉄鋼メーカーという特殊な立場を離れた意見は見当たらないが、「それなりに理解ある人事屋さん」の思考方法をつかむにはいいだろう。それはとりも直さず、一般的な大企業が若手社員に求めていることであろう。
ただ、現在の若手が直面しているジレンマはより深刻で複雑だということを、筆者は知っておくべきだろう。