本書は1939年(昭和14年)に起きた「ノモンハン事件」というソ連との「大戦争」を詳細に紹介した本であるが、当時の日本の国家的誤りの記録として高く評価できる内容であると感じた。
当時の「満州国」と「ソ連」との人も住んでいないような、あいまいな国境線についての争いが、「日本軍は、戦死・行方不明・戦
...続きを読む傷・戦病19668人。ソ連軍は、戦死・行方不明・戦傷・戦病23926人」という「大戦争」になったことについては「現在ではまさに想像を絶するとしかいいようがない」と感じたが、本書の詳細な内容を読んで、当時の日本の「国家的誤り」を痛感する思いがした。
「朝鮮軍・関東軍・参謀本部それぞれの思惑」が交錯する当時の日本において、軍部が大きな政治的発言力を持ち国家戦略をリードしていた実態を読んで、「なんと愚かなことか」との感想を持った。
1939年当時、日本軍は中国の本土の約半分を占領しており、この日中戦争のめどがまったくつかない状況の中で、さらにソ連との大戦争を始める余力などあるわけがない。その中で、当時の関東軍は、ソ連との戦争に傾斜していく。全体を指揮する参謀本部が、必死にブレーキをかける中で、アクセルを踏み続ける関東軍の愚かさ。本書を読んで、当時の日本の国家体制の異様さがわかった思いがした。
本書は、政治が機能せず、軍部が権力を持つことの弊害がよくわかる歴史書である。