橘外男の作品一覧
「橘外男」の「生不動」「葛根湯」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
橘外男は初読。 #朝活書写 のお題に取り上げられていて、気になったので読んでみた。何でも乱歩と同時期に活躍した奇談・怪談の名手で、直木賞受賞作家。寡聞にしてその名を知らなかったのだが、最近、中公文庫から2022年、23年と立て続けに作品集が出るなど再評価されているらしい。表題作の「蒲団」が有名とのことだが、「逗子物語」の方が良かった。よくある廃寺の幽霊譚だが、本当に幽霊を見た人はかくやと思わせるストーリー展開で、佳作。ほかにも 姑にいびられ、無理やり離縁させられたことで自ら死を選んだ娘の霊魂が巻き起こす不思議と、死体と再婚する男を描いた「棺前結婚」も相当に面白い。体が弱く、7歳で夭折した子供との楽しい思い出と、その子供が幽霊となって現れるまでを描いた「帰らぬ子」も良い。
Posted by ブクログ
橘外男の日本を舞台とした怪奇小説を集めたもの。執筆は1937(昭和12)年から1957(昭和32)年。
初めて聞く名前の作家で、全然知らなかったのだが、江戸川乱歩と生年が同じらしい。
巻頭の『蒲団』を読んで衝撃を受けた。昭和12年の作品などとは信じられない、実に素晴らしく、傑出したホラー短編なのだ。これこそが名作というものだろう。
感動しつつ、2つめの「棚田裁判長の怪死」を読んでみるとこちらは私には面白くなく、良くなかった。しかし他はなかなか良く、長めの「棺前結婚」「逗子物語」は面白かった。これらに出てくる幽霊は人を取り殺すような悪意の存在ではなく、「善い霊」なので、恐怖メインではないが、なにがしかの感情を喚起する優れた幻想小説だった。
文章は完璧というには遠く、ときどきひっかかる部分もあるものの、「語り」は実に上手く、読者を巧みに物語ストリームに乗せてゆく。人物像や台詞、情景等にはそれなりにリアリティがあり、何から何まで人工臭があってあからさまに作り物めいた江戸川乱歩の世界とは一線を画し、勝れている。
橘外男はこのような怪異小説をを中心にたくさん書いた小説家らしく、これからちょっとこの作家の本を(古書で)集めようと思う。
Posted by ブクログ
“日本怪談最恐”の一篇と名高い表題作や恐怖と哀切を湛えたマスターピース「逗子物語」の代表作2篇他、「棚田裁判長の怪死」「雨傘の女」「帰らぬ子」など虚実のあわいを描いたバラエティ豊かな怪談7篇を収録。
・とにかく“怖い”と有名な「蒲団」だが、実際なぜこの話はそこまで怖いのか。現れる女の幽霊の描写か、敷布団の中に隠されたものから想起する猟奇性か、はたまた因果も何も関係なくその蒲団に関わった者に祟る凄まじいまでの怨念か……恐らくはそれらが揃ったが故のこの無類の怖さ、なんだろう。
・先祖の受けた恨みが子孫に仇を為す体の「棚田裁判長の怪死」は不条理といえば不条理譚。ピアノ曲の演奏に合わせて尺八や風の音、怒号や叫声が現われるシーンは、短いけれどもここだけで1つの音楽怪談になるんじゃないかというくらいの迫力。
・優秀だが気弱で世事に疎い青年医師と彼に嫁いだ令嬢「棺前結婚」はもどかしさとやりきれなさばかりが残る。最後に棺を開けなかったことで物悲しくも美しく物語が終わった、ような。
・旅行先で目撃した炎に包まれる3人の人々「生不動」。解説にある通り著者本人の過去の心象風景か。
・妻を喪い失意のまま逗子に逗留する“私”が従者2人を伴った美しい少年と出会う「逗子物語」。“ジェントル・ゴースト・ストーリー”の範疇になるのだろうけど、後半の哀切→恐慌状態→親愛の情、という“私”の感情の極端な起伏が、逆にリアル。
・掌編「雨傘の女」。傘が“どうせ一つ余りましたから”という女の言葉の意味は、その後妻から聞いた事実によって悲しく哀れなものとわかるのだけれど、傘を渡すべき亭主についての言及がその後何もないことを踏まえると、別の……厭な解釈も成り立つわけで。
・幼い頃から難病を患い僅か7歳で逝った長男が20年後《足音だけ》帰って来る「帰らぬ子」。我が子を喪った父親の悲嘆と救済―というとクーンツ「黎明」等、心に沁みる作品はいくつもあるが、これは幼くして亡くなった長男と、健康に成長した次男、2人の子供への親心が描かれているのが特色。前半、長くは生きられぬと覚悟しつつも息子の成長と病状に一喜一憂する両親の姿は微笑ましく哀切極まりない。後半は長男の死後生れた次男が健やかに成長した姿と、奥座敷の外に聞こえる小さな足音に長男を感じる描写が並行する。山岳部に入った次男の登山を必死に反対する母親の姿は、幾つになっても変わらぬ親心というものなんだろう。
我が子を看取った親の悲痛さを身近で具に見ているが故に、未だ父親となっていない自分ですらも、この作品は胸を衝くものがある。