橘外男のレビュー一覧
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橘外男の日本を舞台とした怪奇小説を集めたもの。執筆は1937(昭和12)年から1957(昭和32)年。
初めて聞く名前の作家で、全然知らなかったのだが、江戸川乱歩と生年が同じらしい。
巻頭の『蒲団』を読んで衝撃を受けた。昭和12年の作品などとは信じられない、実に素晴らしく、傑出したホラー短編なのだ。これこそが名作というものだろう。
感動しつつ、2つめの「棚田裁判長の怪死」を読んでみるとこちらは私には面白くなく、良くなかった。しかし他はなかなか良く、長めの「棺前結婚」「逗子物語」は面白かった。これらに出てくる幽霊は人を取り殺すような悪意の存在ではなく、「善い霊」なので、恐怖メインではない -
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ネタバレ“日本怪談最恐”の一篇と名高い表題作や恐怖と哀切を湛えたマスターピース「逗子物語」の代表作2篇他、「棚田裁判長の怪死」「雨傘の女」「帰らぬ子」など虚実のあわいを描いたバラエティ豊かな怪談7篇を収録。
・とにかく“怖い”と有名な「蒲団」だが、実際なぜこの話はそこまで怖いのか。現れる女の幽霊の描写か、敷布団の中に隠されたものから想起する猟奇性か、はたまた因果も何も関係なくその蒲団に関わった者に祟る凄まじいまでの怨念か……恐らくはそれらが揃ったが故のこの無類の怖さ、なんだろう。
・先祖の受けた恨みが子孫に仇を為す体の「棚田裁判長の怪死」は不条理といえば不条理譚。ピアノ曲の演奏に合わせて尺八や風の音 -
Posted by ブクログ
秘境小説の作家として名前は知っていたが、怪談も書いているということは知らなかったし、本書で初めてその作品を読んだ。
長短あわせて7作が収録されているが、表題作の『蒲団』はアンソロジーにも良く収録されているらしいく、肯るかな、確かにベストの作品と思った。上州の古着屋の主人が東京で、縮緬の蒲団を掘り出し物で仕入れてきた。これは高く売れると喜んだのだが、なぜか商いは上手くいかず、家の中は辛気くさくなってしまった。そんなとき、腰を真っ赤にした綺麗な女が姿を現すなど、不思議が続き、とうとう……といった話。怪異を段々と語り、恐怖を盛り上げていく手際が見事。
合理的な解決がないのが怪談とは言え、『