山之口貘の作品一覧
「山之口貘」の「永遠の詩」「山之口貘 小説全集」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
「山之口貘」の「永遠の詩」「山之口貘 小説全集」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
「永遠の詩」シリーズは、まだレビューにはまとめていませんが、全巻、既読です。その中でおそらく誰もが親しみを覚える詩を書いているのがこの「獏さん」こと山之口獏さんです。
社会のことを書いても、ユーモアと明るさがいつもあって、親しみやすい方です。
むずかしい語法の詩はひとつもありませんが、「たった一篇ぐらいの詩をつくるのに/100枚200枚だのと/原稿用紙を屑に」するほど推敲を重ねているそうです。
「ねずみ」
生死の生をほっぽり出して
ねずみが一匹浮彫みたいに
往来のまんなかにもりあがっていた
まもなくねずみはひらたくなった
いろんな
車輪が
すべって来ては
あいろんみたいにねずみをのした
ねずみはだんだんひらたくなった
ひらたくなるにしたがって
ねずみは
ねずみ一匹の
ねずみでもなければ一匹でもなくなって
その死の影すら消え果てた
ある日 往来に出て見ると
ひらたい物が一枚
陽にたたかれて反っていた
<解説より>
フランスで翻訳・紹介されたこともある、獏詩の中でもポピュラーな作品である。この詩も先の詩と同じく戦時中に書かれたもので、同人誌「山河」に載った。あらゆる雑誌が検閲された当時、「検察官はこれをただのネズミの詩として見逃したらしく、あとで山之口獏は痛快がったという」が、この詩を単なる抵抗詩とみなすような皮相な見方には反対である。もっと実存的な詩ではないか。
「鼻のある結論」「来意」「春愁」「求婚の広告」「結婚」「畳」「思い出」「博学と無学」もよかったです。
山之口獏(やまのぐち・ばく)
1903年(明治36)~1963年(昭和38)
沖縄に生まれる。上京後は職を転々としながら住所不定の生活を送る。
貧乏暮らしの中から、明るく、したたかで、ユーモアとふしぎな味のある、独自の詩を紡いだ。
「獏さん」とよばれ、多くのファンに愛されてきた。
Posted by ブクログ
山之口貘さんの詩集ですね。
永遠の詩シリーズの三冊目です。
貘さんの詩は、初めて読みました。そして驚きました。
日本人の詩は、どちらかと言うと内省的で何かしら暗い影があるものなのに、貘さんの詩は明るさとユーモアに溢れていて1903年生まれの人とは思えない斬新さを持っています。
ほのぼのとしているようにみえて、本質をついた鋭さがあり、スッキリとしたわかりやすい表現が魅力ですね。
解説の井川博年さんは語ります。
「貘さんの詩には、いまの日本の若者を惹き付ける魅力がある。貘さんの生き方に共感を覚える人も多いだろう。貘さんはいつも娘さんに語っていたという。『ほんとうの人間はそんなに多くないんだよ。僕は人間でありたい』。
貘さんが命がけで書いた、人間味たっぷりユーモアたっぷりの詩は、時代を超えて輝き続けている。」
ミミコの独立
とうちゃんの下駄なんか
はくんじゃないぞ
ぼくはその場を見て言ったが
とうちゃんのなんか
はかない
とうちゃんのかんこをかりてって
ミミコのかんこ
はくんだ と言うのだ
こんな理窟をこねてみせながら
ミミコは小さなそのあんよで
まな板みたいな下駄をひきずって行った
土間では片隅の
かますの上に
赤い鼻緒の
赤いかんこが
かぼちゃと並んで待っていた
解説の山本兼一さんは
「日々のつつましい暮らしを詠いながらも、読む者に、大らかな悠久の時間を感じさせてくれるのが貘さんの詩の真骨頂なのである。」と綴られています。
仲間から家族から愛された稀有な詩人にめぐり会えて、とても豊かな心持ちをしました。