政府は2035年に国内の船舶建造量を現在の倍(約1800万トン)にするため、10年間で3500億円規模の基金を創設。DX・自動化設備への補助やGX(脱炭素)対応、企業集約を支援し、官民合わせて1兆円規模の投資で国際競争力を強化し、安全保障上の供給網を確保する。
昨年の発表に前後して、各省庁は実態把握に奔走。その重要性は分かるが、中国、韓国に対する同国の支援と比べると遅きに失して何を今更という感も拭えない。他方、トランプ政権による造船業の国を超えた連携策の期待が高まる。だがそれも韓国に出遅れていないか。
安全保障上で重要なのは海路だけではなく、つまり南シナ海やマラッカ海峡、台湾海峡だけではなく、そもそもそこを通過させる海運や船舶の産業であると、そこに注力するまでに、既にどれほどの造船所が再編を強いられたか。
もちろん、日本の造船業はプレイヤーが多すぎたので再編は悪いことではないが。
本書はこうした政策的な話に触れる内容ではないが、造船業をその技術的側面を含めて基礎から学ぶには良書である。余談だが、私は船が好きで、船の科学館に通ったこともある。
ー このように船のエネルギー効率(輸送効率)は大変に高いのです。ところが、スピード(高速)を出すとせっかくのエネルギー効率が急速に悪くなってしまう… 例えば貨物を運ぶ船の中でも特にスピードの速いコンテナ船は、在来鉄道と大差ない輸送効率です。また、時速50km/hより速い高速船(これは主として旅客船です)になると、何と輸送効率が飛行機と同レベルにまで悪くなってしまいます。船の世界では、時速20ノット(約36km/h)も出せば高速船と呼ばれるのはそのためなのです。
ー 陸上にある物体は、その底面で地面に支えられています。車輪やタイヤが付いていれば、その接地面が物体の重量を支えているわけです。ところが、物体が大きくなると接地面積は二乗、重量は三乗で増えるため、接地している単位面積当たりの重量は、次第に大きくなります。地面の強度には限界があるので、必ずどこかで物体の重量を地面が支えられなくなります。つまり、地面にめり込んで動けなくなるということです。これが巨大化の限界になります…船の場合、その重量を支えているのは水の浮力です。都合の良いことに、浮力は船の水面下の体積に比例します。つまり、重量と同じように寸法比率の三乗で増えるため、どんなに船が巨大化して重くなったとしても、その重量を支えてくれます。だから船は理論的にはいくらでも巨大化することができるのです。現実には、港や水路、海峡の大きさ、建造や修理をするドックの大きさなどで、船の巨大化にも限界はあります。
船の可能性はまだまだ消えていない。今年はこの分野も少し力を入れて学びウォッチしたいとも思う。