菌根なんて,1ヶ月前まではその存在さえも知らなかった。あるZOOM学習会をキッカケに大変,大変興味を持ってしまったので,こういう本も手に取ったというわけ。
本書の「編集後記」で編集者の齋藤雅典さんは,その編集趣旨を次のように述べている。
当初は「菌根学」の教科書も検討したが、きわめて学際的で多
...続きを読む方面にわたる「菌根学」を教科書としてとりまとめるには、非力な私たちには難しかった。そこで、各種の菌根の解説をまじえながら、それぞれの著者の研究を紹介するというスタイルをとることにした。また、一言で「菌根」と言っても、菌根の種類によって、その特徴はきわめて多様なので、できるだけマイナーな菌根も取り上げるように心がけた。ただ、生態学的にも重要な菌根である、ツツジ科植物に特徴的なエリコイド菌根について一章を設けることができなかったのは心残りである。(本書,p.225)
と言うわけで,章ごとに各研究者がそれぞれの立場で,自分の研究内容とその周辺(興味関心なども含めたもの)について語ってくれている。わたしにとっては,教科書的な表現よりも「研究物語」として読めるこの編集方針の方がよかったと思う。
それでも,科学的な言葉もたくさんでてきて,その都度,解説や注釈もついているとは言え,なかなかハードな本であることは確か。よほど,菌根菌に興味がないとちょっと読み通すことはできないかも知れない。
さて,その菌根菌について,なぜ,わたし(たちと言ってもいいかな)が,知識として知らないのかというと…。
現在、日本国内の大学で、外生菌根菌やその共生機構に関する講義や研究は、わずかではあるが一〇~二〇校あまりで多少なりとも行われている。一方、森林の生態に関する講義といえば、相当数の理系、特に生物系や農林学系のすべての学部などで行われているはずである。もとをたどって高校の履修科目である生物に着目すると、森林の生態にふれていない教科書は皆無だが、外生菌根に関する記述のある教科書はごくわずかであり、少なくとも必須の教育内容ではない。(山田明義)
とあって,最近の教科書にもあまり触れられていないようだ。菌根のことについては,わたしが生まれる前から研究はされていたようだが,日本でいろいろといわれるようになったのはここ20年くらいらしい。それくらい,まだまだ分かっていることが少ない研究分野のようだ。
菌根については,以下の説明で,このレビュー読者の興味を引くことができるかな。「土壌から養分・水分を吸収するのは根ではない」という小見出しのあとの説明である。
外生菌根を形成した細根部(マツならば側根)は、菌鞘組織によって土壌粒子からは物理的に切り離されている。そして土壌と接する菌根菌の菌糸が土壌養分や水分を吸収し、歯鞘からハルティヒ・ネットを経由して皮層細胞へと養水分を供与している。極端な言い方をすれば、根は直接的には土壌から何も吸収していないのである。一方、皮層細胞からハルティヒ・ネットへは、光合成による産物(糖)が供与されている。この双方向の物質輸送が細胞レベルでの歯根共生のおもな役割である。(山田明義「第2章 外生菌根の生態とマツタケ」より)
そうです。
植物の根っこは,自分で水分や肥料分を吸収しているのではなく,菌根菌を通して肥料分のとけた水を吸収しているのです。植物体は菌根菌のお陰で生きていると言えるんですって。
どうです,興味が沸いてきましたか(^^;;