自治体の職場風土改革、改善運動の応援しているスコラコンサルトの元吉由紀子さんと複数の自治体職員による一冊。
業務改善運動は、一時のブームが一巡し、また新たなステージに入っている気がします。過去取り組んだ自治体も新しい形で継続しているところもあり、いろいろな事例を見ることができるうえ、実際改善運動に取り組んだ職員の生の声が掲載されているので、行革を担当している職員でなくても興味深く読むことができると思います。
改善運動の発表会は全国で開催されましたが、大規模で派手な改善を、面白おかしく発表するグループだけが目立つこととなり、普段こつこつと改善運動をしている職員がどうしても見落としがちになってしまう。
本来クローズアップされるべきは、誰でもできるようなちょっとした改善を広く展開していくこと。派手な発表だけに目を取られずに、本当に必要な改善を継続的に展開できる、そんな組織を目指すことこそ、本当の強い組織になっていくものだと思います。
改善事例の総括
・改善運動の目的をとらえ直す
それぞれの行政組織の経営力を高めるために行っているものであることから、各自治体の行政経営の進捗状況に応じて改善運動の目的をとらえておくことが、最も重要
・経営の価値観を変える場合
新しい判断基準に基づいた経営改革を率先すること
・業務改善を促進する場合
個々に辞令を発表するだけでなく、庁内でどのような業務がどこまで改善されているのかレベルアップがわかるよう、全庁的にナレッジを蓄積をして、よりいっそう向上していく
・人勢育成を促進する場合
職場内、職場間、また県民と協創する取り組みをそれらを支援する管理職の育成責任をうまく結びつけていく
・職場改善を促進する場合
行革リーダーが全庁横断した会議で情報共有と継続的改善に責任を持つ
部から推薦を受けた若手職員は安心感をもつ、送り出す管理職にも後押しする上司の支援力を養成する
・改善の推進を個人にゆだねる場合
目標管理で個人が日々の仕事を通じて改善を推進
改善運動のボトルネック
1 改善しても差がわかりにくい役所仕事
・役所は、住民からは見えにくい存在
・住民にとって、地域が良くなるとはどういうことかがとらえにくい
・どんな役所を目指すのかは、首長と職員が自らきちんと設定し、地域や住民に対しても示すことが重要
2 首長の関与附則
・マニフェスト、政策しか着目されない
・首長と職員のギャップ
・首長と管理職の対話が成り立たない
・意識改革の取り組みが空回り
・方針の軸合わせ、計画の整合性を取らないまま走り出す
・事業評価を形骸化させている
3 業務プロセスが盲点になっている
・業務を標準化する習慣がない
・担当者任せの進捗管理
・無謬性から、問題を認めにくい
・業務改善の手段を目的化してしまう
4 改善は誰がするものか
・若手職員がやる活動になっていないか
・求められる職員像や階層別の役割が明確か
・育成対象が一般職員だけではない
5 管理職が抵抗勢力になる
・課長が板挟み状態にある
・戦略を展開するための「組織目標」を設定していない
・組織マネジメントを教えてくれる人がいない
6 改善運動をすることが目的化している
・改善事例発表会が学芸発表会になっている
・改善事例の評価(審査)基準が不明瞭
・住民や議員が関心を寄せているか
・改善運動の目的は何だったのか
・安易に他自治体の「横並び」をしていないか
<目次>
序章 みんなで地域の明日を切り拓く
第1章 改善のミリョク
第2章 改善のヒケツ
第3章 全国的に広がり始めた改善運動
第4章 自治体における取り組み経緯と今後の課題
第5章 改善運動のボトルネック
第6章 改善運動のステップアップ