作品一覧

  • 墓標なき墓場 高城高全集1

    墓標なき墓場 高城高全集1

    小説・文芸

    4.3
    1巻440円 (税込)
    昭和33年、夏。北海道。未明の北の海に殿村水産所属の運搬船、天陵丸が沈んだ。乗組員6人は全員死亡。その朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が、岸壁に衝突した。海難事故と不審なサンマ船の衝突事故に疑問を抱いた不二新報釧路支局長江上武也は独自の取材を進めた。単なる事故か、それとも事件か……。だが、何者かの策謀によって江上は釧路を逐われる。それから3年。かつての関係者が次々と疑惑の死を遂げる釧路の街に、江上は帰ってきた――。日本ハードボイルドの黎明期を駆け抜けた幻の作家・高城高。霧にけぶる北の港町を舞台に描き上げた唯一の長編が、いまよみがえる!
  • 函館水上警察

    函館水上警察

    小説・文芸

    3.8
    1巻669円 (税込)
    明治二十四年の函館に誕生した、小さな警察署。外国船が多数来航する国際貿易港というこの土地特有の事情に対応するため、署には外国語に堪能なものが集められ、専用の小蒸気と端艇を有していた。個性豊かな署員を指揮するのは、アメリカ放浪経験をもち、フェンシングの名手でもある五条文也警部。ラッコ密猟船の水夫長の変死事件や、英国軍艦の水兵失踪事件などを解決するため、男たちは日夜陸と海を駆ける――。長年の沈黙を破った著者が新境地に挑み、絶賛を博した明治警察物語。若き日の森鴎外の知られざる函館訪問譚「坂の上の対話」を併録。
  • 冬に散る華

    冬に散る華

    小説・文芸

    5.0
    1巻693円 (税込)
    侍のごとき刑事あり――激動の明治時代、港町を脅かす大事件に挑む!明治24年10月、函館水上警察署の五条文也警部は、人々の注目を集める見慣れぬ毛皮のコート姿の美貌の女に目を奪われた。函館に生まれながらロシア人の養女になったという彼女の切ない過去を描く「ウラジオストクから来た女」、英露両国の対立が一触即発の状態にまで発展する函館港の危機「聖アンドレイ十字 招かれざる旗」などの4編に加え、文庫オリジナル短編「嵐と霧のラッコ島」を収録。フェンシングの名手五条を筆頭に、函館の平穏を守るべく、日夜街を奔走する刑事たちを活写する、明治警察物語。(単行本版タイトル『ウラジオストクから来た女』を改題・文庫化したものを電子書籍化しました)
  • 暗い海 深い霧 高城高全集3 

    暗い海 深い霧 高城高全集3 

    小説・文芸

    4.5
    1巻770円 (税込)
    スパイとして国後島に潜入し、ソ連の警備隊に拘束された男。日本に帰還した男を待っていた真実とは――「暗い海 深い霧」。海岸で女の死体が発見された。痴情のもつれが原因と思われた事件に、なぜか公安調査官の影が――「微かなる弔鐘」。ある作戦に召集された米諜報機関の日本人工作員たち。諜略の果てに彼らが見たものは――「海坊主作戦」。東西冷戦の時代、謀略の最前線となった国境の海で繰り広げられる諜報戦に運命を翻弄される者たちを、非情かつ詩情豊かに描く作品群と、荒涼たる原野から地の底の炭鉱まで、北の大地に生きる男たち女たちの事件簿。昭和30年代前半に発表された高城作品の精華13編を収録。
  • 風の岬 高城高全集4

    風の岬 高城高全集4

    小説・文芸

    4.0
    1巻770円 (税込)
    麻薬密売にからむ轢死事件を追う捜査官が、製紙工場の廃液がにおう町で見た人間模様とは――「踏切」。ススキノに生きる男たち女たちが巻き込まれた交通事故の真相に新聞記者が迫る――「飛べない天使」。嵐の中、岬へ向かう男たちを待っていた運命とは――「風の岬」。新聞記者、麻薬捜査官、国境の海の謀略に巻き込まれた男たちや、歓楽街にうごめく若者群像。そして、北へ向かう追跡者たちに、戦後の闇をひきずる男の軌跡……。1960年から1970年にかけて、北の都・札幌を舞台とした作品を中心に、北海道で繰り広げられる人間ドラマを活写した作品群! 高城高全集、第4弾。
  • 凍った太陽 高城高全集2

    凍った太陽 高城高全集2

    小説・文芸

    3.8
    1巻770円 (税込)
    入院中、同室となった男に、盛り場で雀荘を経営する妹の安否を確かめてほしいと頼まれた大学生の〈私〉は、戦後の焼け跡が広がる仙台の街を、彼女の影を追ってひたすらにさまよう。米兵相手の特飲街に、彼女はいた。だが、そこには危険な男たちの影がうごめいていた――。米兵が闊歩する戦後の仙台を舞台に、日本ハードボイルドの黎明を飾った「X橋付近」ほか、日本人娼婦と米兵の炎熱の夏の悲劇を乾いた筆致で活写した「ラ・クカラチャ」、北海道の原野に消えた友の追跡行を描く「淋しい草原に」、そしてひとりの〈運命の女〉を追う連作「由利」シリーズなど11作品に、エッセーも収録した、高城高、珠玉の短編集!

ユーザーレビュー

  • 冬に散る華

    Posted by ブクログ

     『ウラジオストクから来た女 函館水上警察』文庫化に当たって、書き下ろし短編『嵐と霧のラッコ島』を付け加えた一冊である。オリジナル単行本に、微妙なかたちでおまけをつけて、読者の散財を促すのが商法であるならば、これには賛成できかねるが、こと高城高の短編一つが加わるのであれば、ぼくにとってはそこには市場価格では測れない価値があるとしか言いようがないので、出版社の目論見通りになるのは悔しいのだけれど、この作家の短編一つに740円、別に決して、惜しくはないのである。

     さて本書全般の詳細は『ウラジオストクから来た女』のレビューをご参照願うとして、ここで付け加えられた短編『嵐と霧のラッコ島』についてであるが、これは函館というよりも、ラッコ島こと得撫(ウルップ)島を舞台にした水産会社の海獣猟船の遭難事件である。魚とりの漁船ではなく、ラッコの毛皮を求めての海獣猟という辺りに、時代特性の感を禁じ得ないところだが、それ以上に、未だ、千島列島が明治八年以来日本領となっている中、測量もされず、日本の辺境のようなかたちで放置され、経済的にも一部の民間会社しか着目していないという状況、その状況下で起こる海獣乱獲といった未統制の北の海こそが、ここでは浮き彫りにされている。その辺りが本書にて着目されるべきところであろうか。

     この事件を通して、日本の政治が眼の届かない当時の領土を放置したままにしていること、一方で遥かに遠い国の英国あたりが先に測量し、各国が乱獲をしている状況について、登場人物のひとりに憂えさせているのだが、現代に移し替えた北方領土問題についても、歴史的に意味するところを見定めてみようとすると興味深いことに、日本の歴史的国策の無雑作であった有様が、今更ながら浮き彫りになってくると思う。

     敢えて完了したシリーズに新しい一篇を加えさせたのも、当時より、次の年には渡米を考えていた五条というシリーズ主人公の肚づもりと、その後に彼を見舞う運命との無常を語ると同時に、上のようなニッポン国の、地方を顧みない中央支配的構図に対する、作者ならではの反旗的意味合いがあったのか、と敢えて考えさせられる、これは文庫改訂版なのであった。

    0
    2013年05月27日
  • 函館水上警察

    Posted by ブクログ

    この本で“明治24年”、或いは“明治15年”の“函館”という劇中世界を逍遙すると、何か「明治・大正或いは昭和の初め頃の趣を想起させるモノが幾分在る函館」をまた訪ねてみたくなる…

    0
    2013年05月15日
  • 凍った太陽 高城高全集2

    Posted by ブクログ

     2008年に創元推理文庫の面目躍如とばかりに出版された高城高全集全四巻本の、これは第二巻。第一巻は、創作第一期(1955~1970年)に書かれたものでは唯一の長編小説『墓標なき墓場』。第二巻は、東北大文学部在籍中に『宝石』の懸賞に応募して一位を受賞した『X橋付近』を初め、当時比較的陽の当たった作品を収録しているようだ。

     ちなみに第三巻『暗い海 深い霧』は、北海道を舞台にした短編を収録。とりわけタイトル通り、深い霧に包まれた、年間日照時間の最も短い街・釧路を舞台にした作品が大半を締める。未読の第四巻『風の岬』は、それらの範疇から外れた作品、陽の当たらなかった作品などをまとめたものであるようだ。

     本書は、デビュー当時、即ち1957年の北海道新聞社入社以前の仙台在住頃の作品に加え、北海道を舞台にした作中有名なもの、シリーズものなどを収録している。

     シリーズものとは、いわゆる悪女ものである。志賀百合というクールな謎の美女の出る四作は注目。特にフェンシングを得意としていたらしい作者らしく、フェンシング試合中の事故の真相と疑念の『賭ける』に始まり、札幌を舞台にした『凍った太陽』、ヘミングウェイがリヨン駅で盗まえたという原稿の行方に絡んだミステリ『父と子』、スペイン、バスク地方を舞台にした『異郷にて 遠き日々』と通して、志賀百合という死に囲繞されたような宿命を持つ女性の、波乱と冒険に満ちた一代記を見ることができ、興味深い。

     さらに私立探偵小説としてシリーズ化を望みたくなるような『冷たい雨』。珍しく私立探偵が登場するのだが、石原次郎という閑古鳥が鳴いているような事務所に始まる厭世観に満ちたような空気が、何だかフィリップ・マーローみたいで、懐かしい。昭和30年代ならではの殺伐感と戦後への期待感が交錯したぴりぴりした街の気配が、鋭い文体で抉られる。

     実際、この本は、釧路をはじめとした道東旅行中に読んだのだが、『美しい草原に』はその釧路のバーを舞台にしたまるで日活アクション映画みたいだ。

     さらに『ラ・クカラチャ』という短編は、米軍占領下の街で、最底辺の生活と生存を描くハードボイルド。ラ・クカラチャがゴキブリの意味だとわかったのはこの短編により、それをハワイ旅行の折、妻に話しながら、ラ・クカラチャは英語に化けた時にコックローチになったんだ、と気づいたりした。

     という具合に私的には、自分の私生活とも関わって忘れがたき短編集となったものである。

    0
    2013年05月05日
  • 墓標なき墓場 高城高全集1

    Posted by ブクログ

    S30年代に学生作家としてデビューしたものの、新聞記者の仕事が忙しくなり筆を絶った作家・高城高。その昭和の香りがにじみ出る作品が復刊されました。
    「元祖ハードボイルド」と云わんばかりのかっこ良さが文体からあふれています。

    0
    2012年12月23日
  • 墓標なき墓場 高城高全集1

    Posted by ブクログ

    昭和三十三年、夏。北海道。
    未明の落石沖で、殿村水産所属の運搬船・天陵丸が沈没した。
    積荷過重による事故とみられ、特に不審な点はないと思われた。
    その同じ朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が岸壁に衝突した。
    こちらも単純な過失による事故と思われたのだが、
    天陵丸沈没事故と、サンマ船の衝突事故とを結びつける
    不穏な噂が天陵丸の乗組員の遺族から流れ始めた。
    そのネタに飛びついた不二新報釧路支局長の江上武也は
    独自の取材を進め、ついに特種の記事をあげることに成功する。
    だが、何者かの策謀によって、江上は釧路を逐われることに。
    そして三年後。
    かつての事件の関係者が次々と不審死を遂げたことを知り、
    江上は再び事件のことを調べるために、釧路へと帰ってきた。

    日本のハードボイルドの礎を築いた伝説の作家・高城高の
    唯一にして幻の長編を収録した、高城高全集第一巻。

    2008年版の「このミス」にランクインされた「X橋付近」で
    初めて高城高という作家のことを知ったのだが、
    ランクインを受けてか、創元から全集が刊行されるとのことで
    これ幸いとさっそく手にとってみた次第。

    「硬質」などの言葉で表現されることが多いその文体の特徴だが
    確かに、読んでいてそれに近い感想は持った。

    必要最低限の描写のみを残したスリムな文体で、
    あれこれ言葉を尽くして説明するということをしていない。
    それでいて、その必要最低限の言葉によって、
    情景や心理がしっかりと描き出されている。

    鋭くて、速い。
    そして、確か。
    もう少し俗に言うならば、とてもカッコよくて、渋い。
    そんな文章だ。

    プロットも、意外と凝っていてうならされた。
    やや複雑な人間関係を、この文体で説明していくものだから
    ついていくのに少しだけ努力を要したが、
    その点に対して「わかりにくい」などと文句を言って
    この作品を低く見るような愚は犯したくないものである。

    とにかく最後まで雰囲気が素晴らしい。
    霧に覆われた北海道の景色を実際に見たことはないが、
    優れた心象風景を提供してくれる絶好の舞台設定だと思う。

    200ページ強と、長編としては短めの作品だが、
    そのボリュームもこの作品には最適。

    全集の次巻は5月発売らしい。
    刊行が待ち遠しい本が、また一冊増えてしまった。

    0
    2012年05月07日

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