本編を読み終えたのは、6月の半ば頃だったと記憶しているが、巻末の付録まで読んでから感想を書こう、と考えているうちに、8月が終わろうとしている。
とにかく情報量の多い漫画で、興味深く読み続けていても、中々残りのページがなくならない。こういう漫画は初めてかもしれない。
当初はDC作品のヒーローを用
...続きを読むいて、そのキャラクター自体の経てきた歴史なども織り込んで、メタ的なコンテクストを包摂する、というような構想だったらしいが、目論見が外れて、オリジナルのキャラクターで話を展開することになってもなお、依然としてその試みは有効に作用していたように感じた。
暗い時代、恐怖に覆われた1985年が、ヒーローを軸に重層的に描かれていく。世代に跨ったヒーローたちの歴史は、物語の重厚さを担保すると同時に、独立した世界であるにも関わらず、現実で描かれてきたスーパーヒーローものを意識せざるを得ず、また彼らの歴史的変遷と物語を接続する。すわ予習が必要か、と思われるほど、重厚なバックボーンが匂わせられるが、次第にそれらが詳らかになっていくのが興味深い。
ストーリーラインが素晴らしいというより、どこをとっても多重に意味が折り重なっていたり、様々なテクストで物語が補強されていたりと、ストーリーテリングの巧みさ・面白さが関心を引いた。
コマ割や絵柄はさして好みではないが、マッチカット的な重ね合わせの演出が多かったり、アラン・ムーアの作劇の仕方が巻末で垣間見えた点は楽しめた。
丁度、相互理解への理想を抱くばかりで、何もできない自分に嫌気が差していた時期だったこともあり、面白く読んだ。ただし、共通の脅威によって、世界が一つになることは恐らくないだろう。