作品一覧

  • 魚雷艇学生
    3.7
    1巻572円 (税込)
    予備学生として魚雷艇の訓練を受け、のちに特攻志願が許されて震洋艇乗務に転じ、第十八震洋特攻隊の指揮官として百八十余名の部下を引き連れ、奄美諸島加計呂麻島の基地に向かう。確実に死が予定されている特攻隊から奇跡の生還をとげた著者が、悪夢のような苛烈な体験をもとに、軍隊内部の極限状況を緊迫した筆に描く。野間文芸賞、川端康成文学賞を受賞した戦争文学の名作。
  • 出発は遂に訪れず
    -
    1巻550円 (税込)
    敵艦に体当りする瞬間に向けて生命のすべてを凝縮させながら、終戦の報によって突如その歩みを止められた特攻隊将校の特異な体験を緊迫した言葉で語る表題作。超現実的な夢の世界に人間の本質を探った画期的作品「夢の中での日常」ほか、「島の果て」「単独旅行者」「兆」「帰巣者の憂鬱」「廃址」「帰魂譚」「マヤと一緒に」など、現実と幻想の間を自在に行き交う文体で、痛切な私的体験を普遍へと昇華させた島尾文学の代表作、全9編。
  • 出孤島記
    -
    1巻495円 (税込)
    南海の孤島にたてこもり、ベニヤ板で作られた“自殺艇”による絶望的な特攻作戦に従事する若い指揮官と180名の部下たち。死の呪縛のなかで出撃命令を待つ彼らの一触即発の極限的な状況を、人間の生と死の本質を見据えつつ、緊迫した文体と重いリアリティで捉えた戦記文学の名作「出孤島記」他、「格子の眼」「砂嘴の丘にて」「朝影」「夜の匂い」「子之吉の舌」「むかで」「冬の宿り」「川にて」。島尾文学の傑作全9編を収録。

ユーザーレビュー

  • 魚雷艇学生

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     初めて読み切った島尾の小説。面白かった。
     小説としては特攻隊として死を覚悟した人間の感情を描くというところがポイントであろう。当時の日本の戦況から、実に貧弱な装備=魚雷艇しか与えられず、またそうした極限状況にあってもなお世間的な人間関係に悩み翻弄され知らずに世間に染まっていく人間の愚鈍さを描いている。
     島尾はそんな自分がおかしかったのでもあろうし、戦争の愚かさ--しかし、人間は戦争を行い滅びるという愚かさを犯し続けるであろうという確信--に対するあきらめをも描いている。 そこに、人間の未来に対する希望などはあまり感じられない。人間という絶望的な存在に希望をもたらす何かがあるとすれば、それ

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    2012年06月14日
  • 魚雷艇学生

    Posted by ブクログ

    作家島尾敏雄が魚雷艇特攻隊員だったというのはつい最近まで知らなかった。この小説は、島尾が海軍に入隊してから、特攻の発進基地となる加計呂麻島に行くまでのところまでが描かれている。大学生として過ごしていた日々が一転、海軍に応召され、それが魚雷艇の特攻「志願兵」としてしぬことを選択する、その過程にいかなる心の動きがあったか。この小説はそれが起こってからかなりの年月がたってから書かれているために、あまりにもそこが淡々としている。当時の島尾の葛藤はいかばかりのものであったのだろう。

    0
    2011年02月01日
  • 魚雷艇学生

    Posted by ブクログ


    野間文芸賞と川端康成賞のダブル受賞という地味に凄い作品。
    特攻隊から生還したという特異な経験が、当時の感情を交えて静かな筆致で描かれる。
    幾度もキャリアで使われた本テーマが、晩年での想起という点も感慨深い。

    0
    2023年01月15日
  • 魚雷艇学生

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

          ―20081023

    1986年に島尾敏雄が亡くなった時、文芸各誌はこぞって島尾敏雄追悼の特集をしている。そのなかで生前の島尾を知る作家や批評家が追悼文を書き、もっとも評価する島尾作品を挙げていたのがあったが、「死の棘」-6票、「魚雷艇学生」-7票、「夢の中での日常」-2票、といったものであった。概ね批評家たちは「死の棘」を挙げ、作家たちは「魚雷艇学生」を選んでいた。
    巻末で解説の奧野健男は、「晩年の、もっとも充実した60代後半に書かれたこの作品は、戦争の非人間性の象徴ともいえる日本の特攻隊が内面から実に深く文学作品としてとらえられ、後世に遺されたのである。それはひとつの奇蹟と言っ

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    2022年10月19日
  • 魚雷艇学生

    Posted by ブクログ

    海軍予備学生となった主人公の青年が、創設されたばかりの魚雷艇を志願し、特攻隊として戦争にくわわることを予定された彼の日々の訓練をつづった作品です。

    ほかの学生たちにくらべてやや年上の青年は、予備学生となった当初から、周囲から浮いた存在として、彼らのようすを観察していることがえがかれています。それでも、彼もまた戦争へと向かう状況から離れた立場に立っているわけではありません。彼は、特攻隊に身を置くことになりながらも、そんなみずからの運命をどこか遠い所からながめるように記しています。

    こうした著者の独特のスタンス、たとえば次の文章によく示されているように感じます。「私は勢い荒々しく声を張りあげて

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    2022年04月11日

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