島尾敏雄の作品一覧
「島尾敏雄」の「魚雷艇学生」「出発は遂に訪れず」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「島尾敏雄」の「魚雷艇学生」「出発は遂に訪れず」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
「震洋」という特攻兵器があったことは以前から知っていて、合板製のモーターボートというその概要を知ったときは、狂気の沙汰であるとしか思えなかった。爾来、とくに専門書を読むようなことはなかったが、この兵器のことは関心の一端にありつづけていた。そして今回、それとは知らずたまたま手に取ったこの『魚雷艇学生』が、まさにその「震洋」の話であった。とはいえ本作は特攻そのものを描いているわけではなく、戦争映画のようなスペクタクルもなければ、人がバタバタと亡くなるわけでもない。「解説」でも触れられているが、語り口はあくまでも淡淡としている。でも戦争の脅威や非人道性が伝わらないかといえばぜんぜんそんなこともなく、そもそもほんらい一介の学生に過ぎなかったはずの主人公=著者がいつのまにか指揮官に任じられていることじたい、この戦争の無謀さを物語っている。数数のエピソードにしても、とうてい戦争で勝てるような集まりではないことがよくわかる。主人公が入隊した時点ですでに勝機はなかったといってよいだろう。野間文学賞および川端康成文学賞を受賞していることからもわかるとおり、本作は単純に文学作品としても名高いが、このような戦争の一端を知ることができるという点で、貴重な戦争の記録としても読む価値がある小説である。
Posted by ブクログ
初めて読み切った島尾の小説。面白かった。
小説としては特攻隊として死を覚悟した人間の感情を描くというところがポイントであろう。当時の日本の戦況から、実に貧弱な装備=魚雷艇しか与えられず、またそうした極限状況にあってもなお世間的な人間関係に悩み翻弄され知らずに世間に染まっていく人間の愚鈍さを描いている。
島尾はそんな自分がおかしかったのでもあろうし、戦争の愚かさ--しかし、人間は戦争を行い滅びるという愚かさを犯し続けるであろうという確信--に対するあきらめをも描いている。 そこに、人間の未来に対する希望などはあまり感じられない。人間という絶望的な存在に希望をもたらす何かがあるとすれば、それは最終第七章「基地へ」の後半に描かれる(母への)祈りでしかない。
鹿児島から無事に奄美の加計呂麻島に到着する。同じく出向を待っていた8個師団のうち3個部隊は途上敵襲に遭いほぼ全滅している。人間とはまことにちっぽけで無力で、戦争や社会(あるいは自然の脅威)に放り込まれたならひとたまりもなく押しつぶされてしまうという無力感が漂う。
Posted by ブクログ
―20081023
1986年に島尾敏雄が亡くなった時、文芸各誌はこぞって島尾敏雄追悼の特集をしている。そのなかで生前の島尾を知る作家や批評家が追悼文を書き、もっとも評価する島尾作品を挙げていたのがあったが、「死の棘」-6票、「魚雷艇学生」-7票、「夢の中での日常」-2票、といったものであった。概ね批評家たちは「死の棘」を挙げ、作家たちは「魚雷艇学生」を選んでいた。
巻末で解説の奧野健男は、「晩年の、もっとも充実した60代後半に書かれたこの作品は、戦争の非人間性の象徴ともいえる日本の特攻隊が内面から実に深く文学作品としてとらえられ、後世に遺されたのである。それはひとつの奇蹟と言ってもよい」と。