1940年代、本国の意向に背いて多くのユダヤ人に対し、独断で「命のビザ」を発給した日本人外交官。この話しをもっと詳しく知りたいと思い書籍を探していた。
本当の事を言うと、この件に関する別の作品を探していたのだが、そのとき唯一書店に在庫があったのが本書だったのだ。本書には命のビザを受け取ったユダヤ人
...続きを読むたちが、シベリア鉄道やフェリーで福井県の敦賀へ渡り、安住の地を求め世界中に散ってゆく様子が描かれている。
恥ずかしながら、杉原千畝氏の事もあまり詳しく存じ上げていなかったが、その救出活動にあの旅行代理店や海運会社が、大きく関わっていた事を始めて知った。たくさんのユダヤの人々を輸送した天草丸というフェリーが、ドイツで造船されていたというエピソードもなかなか興味深い。
多くのユダヤ人を受け入れた敦賀や神戸での取材、そして実際にアメリカへ渡ったユダヤの方々への訪問など、貴重な証言の数々に思わず引き込まれてしまった。アメリカへ渡った方の中には、米国先物取引界の超大物であるレオ・メラメド氏も含まれており、改めて杉原氏と関係機関の功績の大きさに驚いた。
杉原氏は約6000名のユダヤ難民にビザを発給したそうだが、その子孫と家族も含めると結果として相当な数の人々を救ったのだと思う。本書では杉原サバイバー(生存者)という表現をしているが、世界中に「杉原チルドレン」が大勢いるのだと思うと、日本人の一人として非常に誇らしい気持ちである。
先般の東日本大震災の際、多くの外国人が日本人の秩序立った行動に驚いたようだが、前出のメラメド氏が残した「私には驚きは微塵もない、世界で最も礼儀正しい人々だから」 というコメントが印象的だった。