ナボコフの作品一覧
「ナボコフ」の「カメラ・オブスクーラ」「絶望」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ナボコフ」の「カメラ・オブスクーラ」「絶望」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
解説を読むとめちゃめちゃ面白かった。
翻訳の文体が分かりにくいのかと思ったけど、完全犯罪が破れて追い詰められたゲルマンが、芸術作品として創造した手記という額縁小説のような形になっているから分かりにくい。一回通読してから読み返すと、あああの話ね、とつながる。
読み返してみれば、たしかにフェリックスと似ていると言っているのは語り手のゲルマンだけで、フェリックスだって2人が似ていると自分から言ってはいない。一人称小説だからゲルマンの主観で書かれており、アルダリオンもかなりヘボな人物に描かれているけど、ゲルマンに描かれたアルダリオン像と、引用されたアルダリオンの手紙=ゲルマンの主観ではなく、本人の言葉を通して見るアルダリオン像には隔たりがある。小説に描かれたことは小説の中では真実のはずなのに、その前提を揺さぶってくる。小説は真実ではない。小説は想像の産物、虚構でしかなく、言葉による表現は受け手によって再創造されることによって受け取られるが、客観的に目に見せることも音を聞かせることもできない以上、すべては思い込みとも言える。そもそもの語り手の言葉も本当かは分からないし、読者である自分の受け取りはミスリードされたものかもしれない。面白い。
分身なんて嘘だ。鏡だって本当の姿を映しているのではなく、「無数の鏡像からできているこの信用ならない世界」。正しく見えていると信じていたものが、本当は見えていなかったのかもしれない。
Posted by ブクログ
初めて手にしたナボコフであり噂通り強烈な印象を残した「ロリータ」と、この「カメラオブスクーラ」で作者の著書は2作目です。
あとがきにもありましたが、読みはじめ辺りから感じるこの気持ちの悪さは読んだ覚えがあるなぁなんて思っていましたが、「ロリータ」と流れが似ている。
私はなぜ、大人の男性の狂おしいまでの想いに少なからず違和感を覚えたのか、読みながら考えていました。
おそらく、彼が求めていた少女と実際に接触するまでの男性の内面の描写が、女である自分には馴染みのないものだからかな、というのが読み終わってから気づいた私なりの気持ちです。
美術評論家であり、妻子とともに裕福な暮らしを送るクレッチマーは、映画館で見かけた美しい少女マグダに激しい恋心を抱きます。
なめらかな肢体に触れる幸運に目がくらみ、クレッチマーの行動はエスカレートしていきますが、マグダもまた止められない情欲を他の男性に抱いていました。
最後には本当の「破滅」が待っていますが、ストーリー自体に新鮮さは特に感じませんでした。
ナボコフの良さを感じたのは、その描写の方法です。
クレッチマーがむちゃくちゃやろうが、愛人マグダがさらにマイ愛人を作ろうが、まるで美しく花から花へ飛び交う蝶のように、ナボコフは情景を二次元、三次元と描いていきます。
聞くだに気が滅入りそうな人物やストーリーも、精緻に描き出された情景がもたらす効果によって、どんどんと映画のように視覚的なスピード感を持って頭の中を流れていくようでした。
言葉というものを生涯かけて操ろうとしたような、なんとも不思議な深さを感じました。
Posted by ブクログ
一言でいうと、中年の妻子持ちの男が、16歳の少女にのめりこみ破滅していくさまを描いた話だが、裏テーマは、性的魅力のない妻を持った妄想男の行く末、と読んだ。
(とはいえ、ロリータよりだいぶ以前のこの段階では作者が未成熟の女性に興奮する性向を隠したいがために性的魅力のない妻を利用した、とも読めるが、自分の都合で前者と解釈することにする。)
妻/母を長いことやっている私は、いいお母さんだけれど日々の生活でもベッドの中でも大人しく、徹底的に退屈でセクシーじゃなく描かれている作中の妻を、反面教師とした。
妻/母を長いことやっている私はまた、主人公の男が、いけないとわかりながらも性的嗜好に翻弄されてあれよあれよと堕ちてゆく様を疑似体験し、自分の破滅願望をすんでのところで食い止めた。
妻/母を長いことやってきた私は、モラルというガラスの水槽に自分を閉じ込めていたとようやく気付いた。だからこの小説のようにモラルを蹴散らすような話が好きなんだとようやく理解した。
安心で退屈な家庭生活を長く続けるために、魔がさして破滅する前に、多少の波風~秘密とインモラルというスパイスを織りこんでゆく所存です。
ナボコフはほかに「ロリータ」と「絶望」を読んだが、妄想や変態性を、独創性あふれる空想を盛り込みながら、ごく客観的に描く、面白い人だと思う。酒を飲んでみたいと思う作家のひとりだ。