カメラ・オブスクーラ

カメラ・オブスクーラ

小説・文芸
984円 (税込)

4pt

裕福で育ちの良い美術評論家クレッチマーは、たまたま出会った美少女マグダに夢中になるのだが、そこにマグダの昔の愛人が偶然姿をあらわす。ひそかに縒りを戻したマグダに裏切られているとは知らず、クレッチマーは妻と別居し愛娘をも失い、奈落の底に落ちていく……。あの『ロリータ』の原型であるナボコフ初期の傑作。英語版と大きく異なるロシア語原典の独特の雰囲気を活かし、細部の緻密な面白さを際立たせた野心的な新訳。

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カメラ・オブスクーラ のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    初めて手にしたナボコフであり噂通り強烈な印象を残した「ロリータ」と、この「カメラオブスクーラ」で作者の著書は2作目です。
    あとがきにもありましたが、読みはじめ辺りから感じるこの気持ちの悪さは読んだ覚えがあるなぁなんて思っていましたが、「ロリータ」と流れが似ている。
    私はなぜ、大人の男性の狂おしいまでの想いに少なからず違和感を覚えたのか、読みながら考えていました。
    おそらく、彼が求めていた少女と実際に接触するまでの男性の内面の描写が、女である自分には馴染みのないものだからかな、というのが読み終わってから気づいた私なりの気持ちです。

    美術評論家であり、妻子とともに裕福な暮らしを送るクレッチマーは、映画館で見かけた美しい少女マグダに激しい恋心を抱きます。
    なめらかな肢体に触れる幸運に目がくらみ、クレッチマーの行動はエスカレートしていきますが、マグダもまた止められない情欲を他の男性に抱いていました。

    最後には本当の「破滅」が待っていますが、ストーリー自体に新鮮さは特に感じませんでした。
    ナボコフの良さを感じたのは、その描写の方法です。

    クレッチマーがむちゃくちゃやろうが、愛人マグダがさらにマイ愛人を作ろうが、まるで美しく花から花へ飛び交う蝶のように、ナボコフは情景を二次元、三次元と描いていきます。
    聞くだに気が滅入りそうな人物やストーリーも、精緻に描き出された情景がもたらす効果によって、どんどんと映画のように視覚的なスピード感を持って頭の中を流れていくようでした。
    言葉というものを生涯かけて操ろうとしたような、なんとも不思議な深さを感じました。

    0
    2017年05月12日

    Posted by ブクログ

    一言でいうと、中年の妻子持ちの男が、16歳の少女にのめりこみ破滅していくさまを描いた話だが、裏テーマは、性的魅力のない妻を持った妄想男の行く末、と読んだ。
    (とはいえ、ロリータよりだいぶ以前のこの段階では作者が未成熟の女性に興奮する性向を隠したいがために性的魅力のない妻を利用した、とも読めるが、自分の都合で前者と解釈することにする。)

    妻/母を長いことやっている私は、いいお母さんだけれど日々の生活でもベッドの中でも大人しく、徹底的に退屈でセクシーじゃなく描かれている作中の妻を、反面教師とした。

    妻/母を長いことやっている私はまた、主人公の男が、いけないとわかりながらも性的嗜好に翻弄されてあれよあれよと堕ちてゆく様を疑似体験し、自分の破滅願望をすんでのところで食い止めた。

    妻/母を長いことやってきた私は、モラルというガラスの水槽に自分を閉じ込めていたとようやく気付いた。だからこの小説のようにモラルを蹴散らすような話が好きなんだとようやく理解した。
    安心で退屈な家庭生活を長く続けるために、魔がさして破滅する前に、多少の波風~秘密とインモラルというスパイスを織りこんでゆく所存です。

    ナボコフはほかに「ロリータ」と「絶望」を読んだが、妄想や変態性を、独創性あふれる空想を盛り込みながら、ごく客観的に描く、面白い人だと思う。酒を飲んでみたいと思う作家のひとりだ。

    0
    2015年01月26日

    Posted by ブクログ

    ノワールだw クレッチマーの堕ちざまもさることながら、マグダやホーン、ゼーゲルクランツら脇を固めるキャラが、クレッチマーの歪んだ世界に見えない照明で残酷に浮かびあがらせる様もどす黒いw

    0
    2014年05月22日

    Posted by ブクログ

    えらいもん読んでしまった。活字を介していろんな感覚を乗っ取られてるような錯覚。なんだかクラクラしてきた。話しは分かりやすくスリリングな展開にグイグイ引き込まれる。

    0
    2013年12月21日

    Posted by ブクログ

    「ロリータ」とストーリー的に重なるところは大きいが、「ロリータ」ほど複雑でないぶんだけ、よく言えば気軽に、別の言い方をすれば〈読む〉という行為に無自覚に読める作品であった。

    後半、盲目になったクレッチマーをマグダとホーンがあれこれ騙すが、騙される側の無力は解説にもあるように、読者と同じといえる。
    また他方、騙す側のいやらしさ、見えないことが常にふくむいやらしさは、小説であれ何であれ輪廓や構造を有するものに内包されるものといえそうだ。

    読者は常にマゾヒスティックにならざるを得ず、だからこそせめて、どうせ騙されるなら華麗に騙されたい。
    小説において騙す側は、マグダのように、いやらしければいやらしいほど読者を惹き付けるのではないだろうか。

    0
    2012年12月29日

    Posted by ブクログ

    初ナボコフ。「アンナ・カレーニナ」を現代風にして「居酒屋」「ナナ」「椿姫」「マノン・レスコー」が混じり合ったイメージ。小説というよりは映画を観ている感じだけどそれは意図したものらしい。プロットは「マノン・レスコー」だけどアイロニーで味付けしてある。題名はラテン語で「暗室」という意味で解説によると「見ること」が隠されたテーマらしい。ナボコフ初期の作品で源ロリータらしいがかなり面白い。時間をおいて再読してみよう。キーワードに注意して。

    ナボコフはイタズラ好きらしい。
    p213
    「トルストイですって」ドリアンナ・カレーニナは聞き返した。「いいえ、おぼえていませんわ。でもどうしてそんなことがお知りになりたいの」
    他にもプルースト風の変な話中小説が出てくるし。

    0
    2011年09月25日

    Posted by ブクログ

    超おもしろい。マジでずっと怒涛の展開で後半なんか一気に読んだ。
    マグダ、マジで悪い女だけどここまでくると爽快だな〜……。
    ロリータといい絶望といい、主人公が自分では知的な紳士のつもりだけど実際はけっこうまぬけなの面白い。よくこんなに情けなく書けるよね。

    0
    2026年08月07日

    Posted by ブクログ

    ナボコフがまだ渡米する前、ドイツに住んでいた頃にロシア語で書いた小説。中年男性が少女に恋した挙句に破滅する物語という意味では『ロリータ』の嚆矢と見ることもできるが、マグダの悪女っぷりはロリータの比ではない。一方、再読、再々読を要する数々の仕掛は『ロリータ』ほど複雑ではないので読み易く、かつ細部の呼応を楽しめる程度には仕掛がある。サスペンスとしての緊迫感もいい。

    0
    2021年03月01日

    Posted by ブクログ

    地位も名誉もあり、裕福で私生活にも恵まれた男の心に、ふと魔が差して、
    どんどん悪い方へ、抜き差しならない状況へと転がってゆくストーリー。
    途中、タイトルの「意味」がわかった瞬間、慄然としたが、
    彼がいい年をして無茶を仕出かすにしては、
    育ちのよさのせいか、悪いヤツになりきれず、
    むしろ小悪魔と小悪党のペアに翻弄される様子が憐れにして滑稽で、
    そこがこの小説の面白さだと思ってしまう自分の性格には
    幾分問題があるのか、どうか。
    それにしても、巻末のナボコフ年譜、

    > 1916年‐17歳、10月、死んだ伯父の遺産を元手に『詩集』を自費出版。

    という短い記述に嫉妬と羨望を覚えて歯軋り(笑)。

    「そう、生きるのは大変よね」(p.223)by 美少女マグダ

    0
    2016年05月26日

    Posted by ブクログ

    ナボコフさんなのに読みやすいってちょっとびっくりした。初期だかららしかった。ストーリーがさくさく進んでくれるからですね。そう考えるとナボコフお得意のよくわかんない修辞とかもうちょっとあってもよいのかも(偉そう)解説にもあったけど視覚っていう主題を表現するにはイメージをもっと膨らませてあってもいいのかもと思ったので。
    ストーリーは一種面白いくらいのふぁむふぁたーるでした、マグダが思ったより狡猾でどこか矮小な存在に思えたのはたぶんロリータのほうと無意識的に比べてる(まだ読んでないけど)。

    0
    2015年09月24日

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