漂白の歌人、若山牧水を歌人であり、また高校の教師である伊藤一彦氏と彼の高校時代の教え子で俳優の堺雅人が三日三晩にわたってその魅力を語りつくす対談集です。
僕は若山牧水と堺雅人が大好きで、あんまりこういうことばかりにつんのめっていると現実社会とのバランスが取れないで、社会生活にずいぶん支障をきたすで
...続きを読むあろうなとはわかりつつも、こうしてつんのめっております。この本は俳優の堺雅人と彼の高校時代の恩師であり、また自身も歌人である(ぼくは知らなかったけれど)伊藤一彦氏との三夜連続で若山牧水の魅力を語り倒した対談書になっています。
僕は今まで若山牧水という歌人は歌と酒と旅のみに生きて、あんまり家庭を顧みない人だったのかなと思っていましたが、実際のところはよい奥さんに恵まれて家庭でも自分の酒を子供にもうらまれることもなく、家庭を大事にしながらも本当に酒と旅と歌。これに純粋に情熱を傾けた人だったのだなと改めて認識いたした次第です。そして、堺雅人と伊藤一彦氏との師弟関係のやり取りもまたすばらしくて、特に高校時代の堺雅人の姿には
「自分で考えて答えを出そうとしていた」
という伊藤一彦氏の指摘が
「この人は歌人なだけあって堺雅人の内面をすごく見ていたんだなぁ」
と読んでいてそう思ってしまいました。
若山牧水の行き方は「人に迷惑をかけない」とかそういう、いって見れば「かしこい」生き方とは対極にいるんですけれど、そこからつむぎだされた歌というのは心の奥底に響いてきて、僕の場合はいけないいけないと思いつつ、若山牧水の全集なんかを手に取ってしまいそうで、エライ物を読んでしまったなぁ、という若干の後悔を心の中に残しております。
でも、そういう心から情熱を傾けることのすばらしさも、この本は教えてくれるような、そんな気もいたしました。