池上司のデビュー作にして、大東亜戦争の日本国海軍の潜水艦「伊58」と、アメリカ海軍重巡洋艦「インディアナポリス」との海戦を描いたフィクション戦記。
日本の敗戦も色濃くなった1945年7月16日。帝国海軍軍司令部よりレイテ島沖の重要艦船攻撃の命を受け、呉港から出撃した伊58潜水艦は広島、長崎に投下され
...続きを読むる原子爆弾をテニアン基地に輸送後、グアムを経由してレイテに向かう途中のアメリカ海軍重巡洋艦インディアナポリスを7月29日、魚雷攻撃(雷撃)で、発射した6発のうち3発を命中させて撃沈、呉港に帰還後、来る8月15日の終戦を迎える。この海戦は大東亜(太平洋)戦争において最後の艦艇同士の戦闘となり、また、日本海軍にとっても最後の敵大型艦の撃沈記録となった。
この有名な史実を元に、インディアナポリスが原爆をテニアンに届ける密命を遂行した後、なぜ護衛艦なしの単艦でグアムを経由してレイテ島に向かったのか?、撃沈の際に発信されたSOSをなぜアメリカ海軍司令部は黙殺し、生存者の救出を5日後に行ったのか?という実際の「謎」を元に、作者は《ある推論》をたて史実と虚構を織り交ぜて「ミステリー戦記」ともいうべきストーリーを展開する。海上艦船と潜水艦の攻防、艦長同士の駆け引きも緊迫感があり、読ませてくれる構成は見事。
この作品を元に2009年、兵器オタクな小説家、福井晴敏の脚色により、エンターテイメントに徹した映画『真夏のオリオン』が製作された。が、映画は日本海軍潜水艦と米海軍艦船の対決という設定以外ストーリーは全くの≪別物≫。