日経記者によるコーポレートガバナンスについて書かれた本。親子の仁義なき戦いといわれた大塚勝久創業者と娘の久美子社長との経営権争いについて詳しく説明されている。「情」に訴える創業者と淡々と将来計画を説明する「理」の久美子社長の争いは、株主総会で娘に軍配が上がる。一昔前なら、厚い人間関係から創業者が勝っ
...続きを読むてもおかしくなかったと著者は言うが、今回は大差で娘が勝利した。株式会社とは、もはや創業家一族の所有物とは言えず、ステークホルダーを無視した身勝手な経営は、創業者であっても許されない。会社の利益を優先する将来を見据えた経営をしなければならないのは当然で、そのためのコーポレートガバナンスの重要性について、よくわかった。
「創業者はたいがいワンマンである。たとえ娘でも自分に異を唱える人の意見は聞きたくないものだ。会見で勝久氏が「久美子はいくら言っても言うことを聞かない」「まだ反抗期だ」と言い放ったのは、そんな苛立ちの表れだった」p93
「「社員は子供」と言い切る勝久氏にとって、大塚家具はまさに「自分の会社」だったのだろう。久美子氏は次の世代を考えれば、早く脱大塚家経営を進めた方が、株主としての大塚家の利益を守ることにもつながると考えていた。だからこそ弟妹4人のうち、3人が久美子社長を支持したのだろう」p110
「(久美子社長)私を選ぶか、会長を選ぶかといった選択のように報道されていますが、決してそうではありません。株式公開企業として「あるべき経営」「あるべきガバナンス体制」を実現させようとする取締役会の多数意見に対して、個人商店流の経営がしたい勝久会長が抵抗しているという構図なのです」p117
「大塚家具の営業部隊の社風は「体育会系」であるという。自分自身で考えて行動するというよりも、上司の命令には従う。ワンマンと言われる創業者のトップの下で育った社員は自らイエスマンとなっていく。久美子氏は5年間社長を務めた間、幹部社員はもっと自分自身で考えて意見を言うべきだと指導していた」p155
「(JPX日経インデックス400)グローバルな投資基準に求められる要件を満たした投資者にとって投資魅力の高い会社400社で構成。株主資本利益率(ROE)や3年間の累積営業利益などでランキングし、その合計点が高い企業から順に400社を選んだ世界でもユニークな指数」p172
「(久美子氏)いつまでも会社は自分のモノだという意識が消えないのでしょう。自分の自由にできないなら壊してしまった方がいいと感じているようにすら見えます」p217