高橋たか子の作品一覧
「高橋たか子」の「彼方の水音」「高橋和巳・高橋たか子 電子全集」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
愛ではなかった。
玉男、澄夫、そして雪生、物語は展開し、やがて繋がっていく。
「他方、私のほうは、雪生という元型が日に日にはっきりしてきた。その元型はいわば私たちのなかにもあるのであった。二人で、それぞれ自分のなかを井戸を覗くふうに覗くと、いわば共有している、底なしの井戸の水が見え、その水の奥の奥に雪生という元型がちらちらと仄見える。いや、むしろ、雪生と私の関係という元型が仄見える。そうなのだ、関係そのものの元型があるのであった。
これまで経験したことのないそれを、私は私で発見していった。私自身も、やはり、そのようにして思い出しているのであった。そのことで自分が巨きくなっていく、いうにいわれぬ感じを味わっていた。存在の井戸から確実に汲み上げているものがあるのだ。
その元型そのものは普遍なのだが、思い出す能力がある人しかそれを知ることはできないらしい。私自身、殊更、そういう能力にめぐまれているらしい。他の能力において劣っている分だけ、いっそう。
しかも思い出し方というものがある。それが思い出す人の創造の部分である。私はこの世の何処にもありえぬ私固有の思い出し方を発見していった。」
「想像力とは、自分の知らないことを思い出す力のことだ。」
私は一切を知っている。だから私は思い出す。予め知っていることを。人はそれを創造と呼ぶ。
我々が新たに作り出したと思っていることは、すべて予め知り得たことだ。
だが、それを証明する手立てはない。
私が一切を知っているだなんて誰が知っている?それは神のみぞ知る、など、言いだした途端につまらないものになってしまう。
与えられたものとしての創造なんて、キリスト教の影響下にあるようで(実際そうなわけで)解せないが、文章は綺麗だしストーリーも面白い。
Posted by ブクログ
二人の友人の自殺幇助をした女性の物語。たまたま、主人公とすれ違って印象に残っていた学生から、怪しいところを指摘されると、自殺幇助を素直に告白するが、その理由は分からないという取り調べから始まる。
二人の友人というのは、郷里の母との不仲から居場所のない砂川宮子と二度自殺未遂を行った織田薫であった。三人は身近で起きた殺人事件などから、死への興味を深めていた。
普段は弱気だが最期には一人で火口に飛び込んだ砂川宮子と、普段は強気だが二度の失敗から死ねないことが怖く最期の最期には鳥居哲代に頼るしかなかった織田薫が対比を意識されて描かれていた。
主人公が哲学などに興味を持っていることもあり、普段は理論をこねくり回し「死の構造」を知りたいから手伝っているとくどくど理屈っぽく振る舞っているが、砂川宮子に死ぬ間際に、八つ当たりとも言えるような「あなたのせいで死ぬ」と言われるシーンやその後、砂川宮子はガスによってすんなりは死ねなかった可能性に思い至ったりするシーンでは、人間くさい焦りを感じられてよかった。
結局、主人公は人に頼まれたら断れないお人好しなのだと思う。砂川宮子に、あなたが私の話を何もかも受け入れてくれたから私は死ぬしかないところまで来てしまったと言われたり、これを言われても特に反論する材料を自分の中で用意できなかったシーンを始め、火口の中ではガスで長く苦しんで死ぬ可能性があることをいざ死を目の前に臆病になってしまった織田薫に伝えられず「火口の中はぱあっと明るい」と嘘をついて望まれたように突き落としたりと、相手の望みを察してそれに応えるように自殺幇助を行なってしまっていた。ただ、実際に死を望んでいる人が目の前にいて、それを手伝って欲しいと言われた際に、私が自殺を止められるだけの理屈や相手への思いを抱けるかと聞かれたら、難しいと感じた。鳥居哲代は両親を亡くし親戚の家で暮らしていたり、今の生活環境に女性が少ないこともあり、砂川宮子と織田薫以外にはろくに友達がいなかったから、その傾向に拍車がかかったのではないかとも考えられた。求められることをやっただけという彼女なりの友情の表現だったのかもしれない。