【感想・ネタバレ】P+D BOOKS 誘惑者のレビュー

あらすじ

鬼気迫る“自殺者と自殺幇助者”の心理葛藤。

噴煙吹き上げる春まだ浅い三原山に、女子大生がふたり登っていった。だが、その後、夜更けに下山してきたのは、ひとりだけ――。

遡ること1ヶ月前、同様の光景があり、ひとり下山した女子大生は同人物だった。自殺願望の若い女性ふたりに、三原山まで同行して、底知れぬ火口に向かって投身させた自殺幇助者の京大生・鳥居哲代。

生きていることに倦んだ高学歴の女学生たちの心理を精緻に描き、自殺者と自殺幇助者の軌跡をミステリー風に仕立てた悽絶な魂のドラマ。高橋たか子の初期長編代表作で第4回泉鏡花賞を受賞。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 二人の友人の自殺幇助をした女性の物語。たまたま、主人公とすれ違って印象に残っていた学生から、怪しいところを指摘されると、自殺幇助を素直に告白するが、その理由は分からないという取り調べから始まる。
 二人の友人というのは、郷里の母との不仲から居場所のない砂川宮子と二度自殺未遂を行った織田薫であった。三人は身近で起きた殺人事件などから、死への興味を深めていた。
 普段は弱気だが最期には一人で火口に飛び込んだ砂川宮子と、普段は強気だが二度の失敗から死ねないことが怖く最期の最期には鳥居哲代に頼るしかなかった織田薫が対比を意識されて描かれていた。
 主人公が哲学などに興味を持っていることもあり、普段は理論をこねくり回し「死の構造」を知りたいから手伝っているとくどくど理屈っぽく振る舞っているが、砂川宮子に死ぬ間際に、八つ当たりとも言えるような「あなたのせいで死ぬ」と言われるシーンやその後、砂川宮子はガスによってすんなりは死ねなかった可能性に思い至ったりするシーンでは、人間くさい焦りを感じられてよかった。
 結局、主人公は人に頼まれたら断れないお人好しなのだと思う。砂川宮子に、あなたが私の話を何もかも受け入れてくれたから私は死ぬしかないところまで来てしまったと言われたり、これを言われても特に反論する材料を自分の中で用意できなかったシーンを始め、火口の中ではガスで長く苦しんで死ぬ可能性があることをいざ死を目の前に臆病になってしまった織田薫に伝えられず「火口の中はぱあっと明るい」と嘘をついて望まれたように突き落としたりと、相手の望みを察してそれに応えるように自殺幇助を行なってしまっていた。ただ、実際に死を望んでいる人が目の前にいて、それを手伝って欲しいと言われた際に、私が自殺を止められるだけの理屈や相手への思いを抱けるかと聞かれたら、難しいと感じた。鳥居哲代は両親を亡くし親戚の家で暮らしていたり、今の生活環境に女性が少ないこともあり、砂川宮子と織田薫以外にはろくに友達がいなかったから、その傾向に拍車がかかったのではないかとも考えられた。求められることをやっただけという彼女なりの友情の表現だったのかもしれない。

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2026年06月08日

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