≪2022年6月号≫月刊 書店員すず木

≪2022年6月号≫月刊 書店員すず木
この道10年のプロ書店員・すず木です!
前月に配信された新作マンガで実際に読んで面白かったものの中から<少年・青年マンガ><少女・女性マンガ>それぞれ1作品を勝手に「今月の書店員すず木賞」としてご紹介!

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今月の書店員すず木賞

少年・青年マンガ

      • エクソシストを堕とせない 1

        エクソシストを堕とせない 1

        【デジタル版限定!「少年ジャンプ+」掲載時のカラーページを完全収録!!】魔王サタンを倒すために最強のエクソシストとして、劣悪な環境で育てられた神父の少年は、心に深い傷を負いながら各地に蔓延る悪魔と戦い続けていた。やがて訪れる一人の少女との出会いをきっかけに、少年はこれまで抱くこともなかった温か...

        最強エクソシストVS魔王サタンのバトルマンガ…にラブコメ要素も加わり、読み応えバツグンな少年マンガ!

        魔王サタンを倒すために最強のエクソシストとして、劣悪な環境で育てられた神父の少年。
        唯一“尊敬しない”人生の先輩である「センセイ」から言われた
        「恋をしろ 人を愛せ。そうすれば神が作ったこの世界をきっと愛せるようになる」
        という言葉が、独り立ちした後も心にひっかかっていました。

        そんなある日、彼はサタンに狙われている「恋する悪魔」をモチーフに絵画を描く少女・愛月(あつき)イムリの護衛を任ぜられます。
        神に背いてでも貫きたい恋に憧れるイムリに対し、人に恋することがわからない神父の少年。
        2人の波乱に満ちた同居生活がスタートするのですが…。
        聖書をベースにしたバトルファンタジーな作品なのですが、“七つの大罪”“堕天使”“魔王”“ファムファタール”など、好きな人には刺さりまくる単語がバンバン登場します。
        更には、七つの大罪を司る「魔王サタン」や「魔王アスモデウス」「魔王マモン」など最初から強敵登場でワクワクが止まりません!
        また、戒律に縛られた神父の少年という要素も捨て置けません。

        バトルマンガとしての要素で十二分に魅力的な物語なのですが、そこへ更にラブ要素が加わります!!
        ヒロインのイムリは朗らかな人柄で、ふとした表情がとにかく可愛い。
        自分をしっかり持っている所も魅力的です。
        普段は自分を押し殺している神父の少年に「楽しい」と思わせてしまうくらい微笑ましい同居生活を送るイムリですが、実は裏がある少女だったのです。
        今後、神父の少年との関係がどうなるのか…!?物語の中核になりそうな部分です。


        他にも気になったのが、キャラクターの名前について。
        この物語、エクソシスト側のキャラクターの個別の名前がほぼ出てこないのです。
        「あれ」「神父」「センセイ」…。
        立場を呼称することはあっても、名前そのものを呼ぶことがありません。
        主人公の名前ですら1巻の中に出てこないのです。
        神父は“個人”ではなく、神の聖名のもと信仰に従事する存在であるということを表すために名前が出てこないのか…。
        主人公の神父の少年の名前が明かされる時はいつなのか…気になるところです。

        1巻目から非常にテンポよく物語が進みます。
        迫力あるバトルシーン、可愛いキャラクターデザイン!
        どこをとっても期待しかありません!!

少女・女性マンガ

      • ブスなんて言わないで(1)

        ブスなんて言わないで(1)

        ルッキズムは、彼女たちがぶっ潰す――! 『美人が婚活してみたら』の著者が描く、反ルッキズム×シスターフッドの物語! 「ブス」と言われ、学生時代にいじめられていた知子。大人になった彼女は、自分をいじめていた“美人”の同級生・梨花が美容家として成功していることを知り、怒りに震える。知子は、梨花へ...

        視点を変えればコンプレックスも変わる。ルッキズムについて考えるキッカケを与えてくれる作品です。

        「ブス」と言われ、学生時代にいじめられていた山井 知子(やまい ともこ)。
        大人になった彼女は、自分をいじめていた“美人”の同級生・白根 梨花(しらね りか)が美容家として成功し「反ルッキズム」の活動をしていることを知り、怒りに震えます。
        納得がいかない知子は、梨花への復讐を決意しますが…。

        「ルッキズム」という言葉をご存知でしょうか。
        容姿の美醜によって人物の価値をはかるような外見至上主義を表す言葉です。
        近年、ルッキズム的な発言や価値観が問題視されるケースが多くなりました。
        この物語の主人公・知子はそんなルッキズムにがんじがらめに縛られて身動きが取れなくなっているように感じられます。
        作中、知子が梨花に対して言った
        「どうしてブスが…差別されている側の人間が変わらなくちゃいけないんだよ!」
        という叫びは、ルッキズムだけでなく、ありとあらゆる差別について言えることではないでしょうか。
        しかし、知子の主張はそれだけでは留まりません。
        「美人にルッキズムのなにがわかるっていうんだよ」

        ルッキズムを否定したい知子ですが、そんな彼女もまた美人に対してルッキズム思考がはたらいていたのです。

        学生時代の梨花はその美しさ故に男子から言い寄られ、男子をとりまく女子からは反感を買うことが多々ありました。
        美人というだけで中身は関係なく判断されることに嫌気がさし、高3で自分を変化させた彼女でしたが、知子と出会ったのはそんな時でした。
        見た目で判断されることの辛さを知っている梨花だからこそ、周りから何と言われようが堂々としている知子の強さに憧れていたのですが、知子は梨花のことをいじめの首謀者と敵視していたのです。
        それは美人である梨花への偏見から生じる思い違いでした…。

        知子からすれば容姿に恵まれ人生イージーモードのように思える美人の梨花もまた、ルッキズムの地獄を味わっていたのです。
        ルッキズムによって傷つけられたハズの知子がルッキズムによって梨花を傷つけるという、なんとも皮肉な構造になっています。

        描くのは『わたしはあの子と絶対ちがうの』のとあるアラ子先生。
        『わたしはあの子と絶対ちがうの』ではアイデンティティについてリアルに描かれていました。
        とあるアラ子先生はとても身近な、誰しもがモヤっと思ったことがあることをそのまま描かれるのですが、多角的な視点で描いているところが凄い!
        今作もルッキズムというテーマですが説教臭さはなく、こっちから見ればこうだけど反対側から見ると違う…ということに気付かせてくれます。

        梨花と知子がお互いにどう変化していくのかも気になりますが、彼女達をとりまくキャラクター達にも注目です!
        身長が低いことに悩む小坂や元女芸人の山本、プラスサイズモデルの奈緒美など、様々な悩みを抱えた人物が登場します。
        どのキャラクターも「その気持ちわかる!!」と感じられる部分があるのではないでしょうか。

        ルッキズムとはなにか?ということや、そこに根深くある問題、悩む人たちが悩まずにすむにはどうしたら良いのかを鋭く描いた本作。
        この作品を読んで「ルッキズム」について考えるキッカケにしてはいかがでしょうか。

こちらもオススメ!!

惜しくも今月の書店員すず木賞からは漏れたものの、オススメの作品をご紹介!!

書店員すず木

2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
年間に読むマンガの冊数は2000冊以上。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。

最近の書店員すず木:読売テレビさんの「川島・山内のマンガ沼」に出演させていただきました!
この特集をご覧になっている方はお気づきかもしれませんが、ダークな作品大好きです…。
なので、大好物の“デスマンガ”について話せてめちゃくちゃ楽しかったです…。
是非ご覧になってください!

新規会員限定半額クーポンプレゼント