ブックライブ書店員
米粒ひとつも残さず食べなさい。
いただきますをちゃんとしなさい。
そう、小さな頃から教えられてきた方は多いのではないでしょうか。
日々「食べ物が私たちに辿り着くまでの背景」を想像しながら食事をする人はどれだけいるか。
私たちが口にする一つ一つの食材には、多くの人たちの苦労、想い、そして生命が詰め込まれています。
動物にも感情があり、植物にだって痛みを感じるシグナルがあるといわれています。
人間のためだけに、家畜として生まれ、育ち、成長し、一生を終えていく。
その家畜と呼ばれる生命は、日々、何を思い一生を終えるのか。
母は自らの生命をかけて子を産み育てる。
子は大きくなった途端にどこかへ連れ去られ、ずっと戻ってこない...。
待っても待ってもあの子はかえってこない...。
一方、大きくなった子は突然大きな車に乗せられ、来た事もない場所で降ろされる。
何か楽しいことが待っているの?
見たこともない人間が近づいてきた。すごく怖い顔で近づいてきた。
恐怖と本能からくる拒絶。そして――…。
母の悲しみを、子の恐怖を、親子の傷みを、私たち人間は自身に置き換えて考えることができるのでしょうか。
この絵本は、食肉解体作業員の「坂本さん」と、肉牛として連れられてきた「みいちゃん」のお話です。
子どもたちには勿論ですが、大人にこそ読んでもらいたい一冊です。
命の大切さと「いただきます」の意味を心に刻み込んで。