揺るがぬデータ検証は驚きの連続
タイトルからはセミプロや上級者向けと思われるかもしれないが、中長期で取り組む個人投資家であれば初心者から上級者まで読んでおくべき。勘や感覚や経験に頼らず、過去の株価データという事実に基づいてコンピュータで分析、これまで信じられてきた株の世界の常識が「ウソ」だったことをバンバン明らかにしていく。
移動平均線で株価は反発したり押さえられたりするのか、ゴールデンクロスで買い→デッドクロスで売る投資法を15年継続したら資産はどうなったか、「損切りは早く利は伸ばせ」は本当に実践すべき教えなのか、株は5月に売られる(Sell in May)はアテになるのか……などなど。これまで投資本やアナリストや株...続きを読む 式評論家などが、当然のように市況解説や投資指南に用いてきた常識や知識が、膨大な株価データという揺るがせない事実を前にけんもほろろに惨敗していく。
投資雑誌などで「この手法で〇億円を稼いだ!」などをグラフ付きで紹介したものなどは「たまたま成功したところを抜き出している可能性がある」とか、後付け解釈でいくらでも言えてしまうことを暴いていたりして、ここまで書いちゃっていいの!?と思う部分も。ただ、機関投資家やヘッジファンドなどはそういうことは全部知っているわけで、同じ土俵で戦わないといけない個人投資家だけが真実を知らずカモにされているのだとしたら、まずい。これまでこういうことを書いている本は知るかぎり皆無なので非常に斬新だった。
その上で、高性能な分析ツールを使ってデータに基づいて有効と証明できる投資戦略が幾つも紹介されているし、読者が自力で自分に合った投資法を探し出せるように、その方法が詳しく解説されている。これまで高性能な分析ツールは機関投資家などのプロかプログラミングの知識のあるセミプロ用のものしかなかったが、最近になって個人投資家でも使えるものが出たとのことで、本書の分析もそれを用いて行われている。
読みやすくわかりやすい文章なのも非常に良かった。頭にすんなり入ってきて、個人レッスンを受けているようだった。とりあえず一読するだけでも、変な通説を盲信して不用意にお金を減らすことは防げるようになるだろう。