とにかく素晴らしかった
全三巻ほどなら寝る前にサッと読み終わってしまうほどあらゆるBL作品を読んできたと思いますが、これほど重厚で練り上げられた物語に没入させられたにも関わらず読み進めるのに大変時間がかかった作品は他にありませんでした。
もちろん素晴らしい作品は数多くあるのですが、良い意味で頭を支配されるような数日を過ごすなんていう経験は中々あるものではないので衝撃を受けたまま書いております。
漫画作品はもちろん、小説、映画、ゲームなど、「悪魔」と言うモチーフは昔から様々なところで使われており、それ自体は特段珍しいものではありません。
ですがそんな「悪魔」を使って創られたこちらの作品の世界観は、異質さや斬新さをこれでもかと感じさせてくれるものでした。
細かな設定や表現の芯が随所に散りばめられた美しい作画が、そういったある種奇抜な世界に確かな説得力を持たせてくれ、まるで自分もこの世界に招待されたような特別な没入感を味わうことができました。
巻末の設定画などは食い入るように見続けました。
日本漫画の古き良き耽美さを感じさせながらも決して野暮ったくはならない、まるでエドワード・ゴーリーやルドンのような絵画的スパイスもある絵で表現されるキャラクターたちは、紡がれる物語上の舞台を一片も無駄にすることなく鮮やかに動き回り、ストーリーとの見事な調和にずっと目を奪われていました。
ものすごく個人的な意見ですがユイスマンス「さかしま」を思い起こさせました。
最後の最後まで「らしさ」を貫いていく主要人物たちの、だからこそ納得のいくラストには色々なことを考えさせられました。
そこまでの計算され尽くした道のりの後のカタルシスは言葉では表現できません。
「BL漫画」の枠には収まりきらない、特別な芸術作品だと思わされました。出会えたことに感謝です。