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ネタバレ 購入済み
不思議と引き込まれる怪作
知人からの推薦で購読。夢中で読み進めた。
「読めるんなら読んで見ろ」と威嚇されたような初印象。
実際に読みづらい。しかし、引き込まれる奇妙なテンポがある。
作者の文章力か自分が波長があったのが良かったか、両方か。
三章は特に読みづらいながらも、視点などが切り替わる前後が支離滅裂とは思えないし、前者が大きいだろう。
作者の自己主張も同様に直前の展開、作者の自己投影物である文房具の軌道と象徴の反芻も兼ねている。
一方でこれは賛否両論と言われれば確かに納得である。
一章、二章とカリカチュアに笑い、あるいはヒヤリとしていると
三章で耳元にまで接近された作者に息を吹きかけられたような思いをした。恐ろしい。
全三章を通して虚構と現実の心理的距離を縮める、明確な誘導レールが引かれており、
読者へ拳をたたき込みたい魂胆を感じる。
三章の作者要素は蛇足という声も分るが、文房具たちの弔いも兼ねた現実への重ね合わせの総仕上げであり、
無いと雰囲気から別物になってしまうだろう。
文房具という身近な道具をチョイスしたのも的確である。
印象的なシーンは、人生の虚無感の両極と言える日付スタンプとナンバリングの結末。
一瞬にして映画的な鮮やかさが目に浮かぶ。その直前の鋏の酔生夢死、「真理」を知った画鋲の狼狽といい、笑えない。
あの集団において優しすぎた紙の楮先生の、予想外に非暴力で、それ故に限りなく残酷な最期!
そして彼の儚い願いを目にした上でのラストシーン!
冒頭で自己に苦しみ泣いていたコンパスが、しかし無言で次世代を残して去り、
後には何に繋がるかも描かれない夢がその次世代から生まれる。美しすぎる。