私は愛すべき馬鹿になりたい
昨今流行りの江戸市中物の時代劇(?)人情とお節介だけが取り柄の貧乏人が集まる長屋での、笑いあり涙ありの騒動が落語の様に語られる物語だ。
登場人物は皆一癖も二癖もある町人で(1人武家も居るが)持ち込まれる相談どころか、今どきの我々なら見てみぬふりをする様な事にも自らしゃしゃり出て粋な落ちを付けて解決してしまう。まぁ若干都合良すぎるよなぁと言う感じも無いではないが笑えて泣ける話ばかりなのでさほど気にならない。2021年4月現在で既刊15巻。そこそこのペースで刊行されているので続きが気になるけど中々出ないなあ、と作者を呪いたくなるようなこともない。安心して読める。とは言えポンポン続きが出てくる訳でもないので幾度も何度も読み直しているのだが、先がわかっていても何度も笑えるし、お気に入りの話では何度も泣けてしょうがない。ほんと泣けるので公共交通機関などで読むのはやめたほうが良い。電車でスマホ覗きながら嗚咽を漏らして涙と鼻水を拭うおっさんなど不審者と通報されても仕方がない世の中なのである。
なぜこんなにこの物語が、登場する人物が好きなのか。ぶっちゃけ彼らは「馬鹿」なのである。
損得勘定が至上命題である現代社会であれば、登場人物の取る行動は「バカじゃないの?やめといたほうがいいよ」と周囲の人間が止めるようなものばかりである。しかし彼らは馬鹿である事を良しとしてお節介をやめない。やめてしまえば江戸っ子の名折れなのである。そしてそこにはお節介を焼くことで自分の利益を図るような下心もない。口ばっかりでは自分の得になるんだと言うような事もいうが、それは江戸っ子の心意気、粋で洒脱な伊達と酔狂の極みなのである。
お人好しの「馬鹿」ばかりが集まるおけら長屋に騒動の種は尽きないが、彼らのような馬鹿に私もなりたい。