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ネタバレ 購入済み
罪と罰を被っても隠したい恥
平安時代。
藪の中で発見された死体を巡って調査にあたる検非違使による、関係者への証言記録の形を取った短編。
死体の男の霊も含めた関係者は各々食い違う証言をして真相は見えてこない。
藪の中で繰り広げられた背徳、人間の尊厳の毀損。
当事者は各々その時抱いた倫理に反する心情や恥辱の暴露を恐れて、殺人の罪を背負ってでも、包み隠そうとする。
真実とは事実を体験した各人の心が決める物。
全員が真実を主張せんと、事実を知られまいとすれば事実は永久に葬られる。
人間心理の闇の深さを思い知らせたという点で事実が確定しないラストもモヤモヤするが納得。
因みに真相は“藪の中”