名称未設定さんのレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
リアルさが伝わってくる点が良い
本作を読む前に、いしいさや『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』(2017)講談社 を読んだ。こちらも、JWの信仰を幼少期から強制されていた女性の元信者の体験談に基づく漫画だが、このいしい氏はJWの活動は半ば嫌々やっていたようである。対して、こちらの『カルト宗教信じてました。』の筆者は10代・20代の頃は信仰心が随分強い信者であったようだ。加えてバプテスマも受けていて、ガチの信者だったようだ。
私も中1のときにバプテスマを受けて高校の頃までは集会に通っていたガチの元信者だが、さすがに25年もやり続けたこの筆者には負ける。むしろ、それでよく辞めることが出来たと感心できる。
ネタバレになるが、筆者の子どもが心臓の病気になったときに、その子の輸血治療に同意するか否かを悩んだシーンが描かれている。結局、輸血に同意したようだが、それでもなおその時点ではJWを辞めなかったのは、組織の教えに強く傾倒していた一つの証左だろう。
筆者がJWを辞めたきっかけは、youtubeで見たアメリカのJWの児童虐待のニュースらしい。そこから組織・統治体の俗っぽいところを知り、目が覚めたという。
四半世紀にわたるJWの活動史を当時の心情に沿って描いた漫画としては大変貴重で、間違いなくカルト宗教の体験談としては一級品と言える。本当は星5つのレビューをしたかったが、一つ減らした理由は次の通り。
勝手かつ失礼な言い方で申し訳ないが、筆者はJWの女性信者にありがちなタイプの精神の持ち主だと思われる。つまり、組織の解釈・教義は論理的に考えれば矛盾だらけなのはすぐに分かるのだが、他の信者の人柄(見た目も含めて)や家族とのしがらみ、場の雰囲気、あるいは美辞麗句(「楽園」とか「永遠の命」といったワード)によって理性的な判断が鈍るようなタイプということだ。要するにカルト宗教にハマりやすいタイプということだが、本作のラストも少しポエム的な終わり方になっていて、そこら辺にまだカルトにハマっていた頃の精神が残っているように思えた。
失った時間は経済学的に言えばサンクコスト(埋没費用で、何をしても取り返せない)なので後悔してもしょうがないが、重要なのは将来のこと。将来、再びカルトに染まることがないようどういう精神を持つべきか。筆者の今後の心の変化にも注目したい。 -
ネタバレ 購入済み
男の願望丸出し系ではない
なんか勘違いフェミニストのおばさんなどは、この漫画を男の願望丸出しとか書いて批評していますが、そういうレビューしちゃう人たちはそもそもちゃんと読んでるのか怪しいですね。
描写や表現はサイコホラーというかサスペンスに近いですし、設定は家族や仕事、学校の問題が前景化したシリアスなものですから、男性の願望を体現した作風という批判は全く当たらないでしょう。
ただし、ストーリーは現実的ではないかもしれません。とは言え、そもそもフィクションに対して「現実性ガー」とかいう批判をし過ぎるのも如何なものかと思います。確かに、ファンタジー系ではなく日常系の作品なので、ある程度現実に接近したストーリーは要請されますが、最低限の水準は満たしていると思います。
従って、現実世界において、現実からやや離れた不思議な人間関係をサスペンス的に楽しむ、という意味においては良作と言えると思います。 -
ネタバレ 購入済み
よくある元二世の体験談だが良い
私も JW 元二世だが、ネット上にはこの手の元二世の体験談はありふれている。
特に目新しい情報は描かれていないが、漫画として(そして電子版として)出すと言う部分には新規性があるので、そこは評価できる。
他のレビュワーも書いているように、作者の育った家庭はかなり狂信者度が高い方かもしれない。
私の親はここまでではなかったし、はっきり言って尻を叩かれた経験は私は殆どない。
こういうのはもっと古い世代の JW がやってたことだと思っていた。
しかし、作者は私よりも年下(たぶん作者は2019年現在で20代くらい? 私は30代半ば)らしく、下の世代でもまだこんなレベルのことやってんのかよエホ証は、と思ったくらいだ。
で、以下は私が考える批判点、および課題点。
主人公(たぶん作者)が性にだらしなくなったシーン(特に好きでもない男とセックスするシーン)が描かれているのだが、そうなったのは宗教のせいだけなのかは若干疑問。
私は大学時代に付き合った彼女と同棲して、そのままズルズルと同棲を数年間続けてようやくその人と結婚したクチだが、特に愛していない女とやるようなことはしなかった。
だから貞操観念と幼少期の宗教はあまり関係ないんじゃないかな、とも個人的には思う。
JW だけに限った話じゃないが、カルトの元信者としての体験や、二世として幼少期に宗教を強制された体験を描く作品というのは、「私は~という体験をさせられて辛かった、嫌だった、孤独だった、浮いていた」という話に終始している傾向がある。本作もその例に漏れない。
で、「普通の人生を送りたかった」みたいなことを言う例が多い。
だが、本当は「普通の人生」なんてそうそうないのかな、と私は最近思っている。
エホ証の子どもが周りのクラスメートを羨ましがるのは結構だが、実はそういうクラスメートだって色々と闇を抱えているのかもしれない。というか、問題のない家庭・人間なんて、本当はいないと最近は思っている。
だから、当時の私は単に「隣の芝が青く見えている」だけだったんではないか、とも最近は思っている。
単に「私はカルト宗教を強制させられていて辛かったんです」だけの体験談だけでは、価値を相対化できたとは言い切れないのではないかと考えている。もし次回作もカルトをテーマに描くならばそこまで踏み込んで欲しい。