• 危険な斜面
    購入済み

    『二階」

    当作者の作品の大半は読んでいるが、長編、短編ともに高い完成度を持ったものが多い。中でも本編の「二階」は圧巻である。
    登場人物を極めて少なく限り、舞台設定も、主人公の夫が伏せている病間のある二階である。主人公である印刷業を細々と経営している妻が夫の家政婦の登場で心理的に追い詰められていくサスペンスの盛り上がり方は読者を最後まで一気に引き込んで離さない。二階がこれほどまでに遠く、恐怖に満ちものになるとはだれが想像しえたであろうか。意のままになるはずの一介の家政婦の存在は夫婦の大きな亀裂を作り悲劇へと導く。短編ならではの筆致と構成に作者の技量を感じた。

    #切ない #ドキドキハラハラ

    0
    2023年03月30日