【感想・ネタバレ】とがったリーダーを育てる 東工大「リベラルアーツ教育」10年の軌跡のレビュー

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Posted by ブクログ

3人の著者がそれぞれのバックボーンを元に、リベラルアーツを大学に根づかせるために、いかに格闘されたのかがとてもよく分かりました。上田教授の学内でのやり取りに重いものを感じました。

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2022年07月24日

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東工大の「リベラルアーツ教育」を構想した面々、池上彰ら実施にあたった人々の問題意識の高邁さや努力は素晴らしいと感じる。東工大については、今野浩のエッセイにもたびたび触れられていたが、理系学生に人文知の薫陶を与えようという意識が非常に高く、般教の教授連も大物が就くらしい。とはいえ、そもそも「リベラルアーツ」は高等教育の場で身につくというものであろうか?。
本書の中でも何度か出てくるように、試験、試験で能率を追求する知的訓練で鍛えられた「優秀な学生」は、「教養」の涵養にも効率を重視する。人文知の世界の「基本書」は、どれも数をこなせるようなものではない。しかし多くの学生は、いわばよくできた「知のカタログ」欲しさに、基本書の梗概あるいは「書評」的なものを、次から次とこなすだけで、「教養」を手に入れた、と満足するだけのような気がする。
高等教育で教養を教育できる、というのは、リベラルな教員が抱く幻想ではないか。特に、東工大のような理系畑では、専門で自分の地歩(学士号でもよいが)を築くためだけにでも、文系の5倍の時間を要求されているはずだ。現代の理系学生は、寺田寅彦とは異なる時代に生きている。驚異的に膨れ上がった科学技術体系を自分なりにモデル化して脳の回路に埋め込む必要があるのだ。教養なるものに無際限に時間を費やす余裕はないであろう。
もちろん、小学校などで、啓発スキルに優れた良い教師に巡り合った経験がある一握りの優れた学生は、世界全般について広い興味を持ち続け、多忙な専門の学習の間にも、自身の根と幹を、太く、広くする営為を、自身でコツコツと積み重ねているだろう。結局は個人の幼少時からの心がけと積み重ねである。大学生になってから教養、教養と言っても、雑多な知識を脳のどこかに書き込むにすぎない。既に遅いのではないだろうか。

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2021年08月16日

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東工大ではここ10年くらいをかけ、「リベラルアーツ」の名のもと、理工系の学生たちに文系的な知を体得してもらう取り組みをしている。本書はその取り組みを中心的に推進してきた池上、上田、伊藤3氏によるもの。各氏の論稿と鼎談を収載している。
自分も含め、文系の人々は理系からっきしって人けっこういるけど、社会に生きたり本読んだりしながら生きている以上、いくら苦手意識をもっていたとしても理系の人のほうが文系分野を取り込みやすいだろう。そして理系の人が文系の素養(リベラルアーツ)を手にすればよりよい世のなかがつくりやすいような気がする。たとえば、科学技術を純粋に探究しているうちに核兵器ができちゃうようなことがあるとして、リベラルアーツや人間の根幹に関する知があれば、倫理的にすべきでないことを止めるなり逡巡するなりといったことができるのではないだろうか。
著者3氏を中心とした東工大での取り組みの様子(特に上田氏執筆の章)は非常に読みごたえがあった。リベラルアーツという新たな方向性(実は東工大のそもそものお家芸だったのだけど)に向かうにあたり、周囲の反対や非難を受けながらも一歩ずつ進めていった軌跡は、いわばリベラルアーツ的な知をもって、東工大にリベラルアーツを植えつけた実践例ともいえるのではないだろうか。
とはいえ、やっぱり「いい大学」だからできたんだろうなとも思う。学生集めや経営に必死な大学では、とてもこんな時間と余裕をかけた取り組みはできないだろうな。
ついでにちょっと批判めいたことを書くと、リベラルアーツの取り組みは「とがったリーダー」を輩出するためのようだけど、リーダーってとがっているほうがいいんだろうかとまず思う。もちろん、とがったリーダーが必要な場もあるだろうけど、そうじゃないタイプのリーダーが最適な場もあると思うから。
さらにいえば、リベラルアーツがリーダー育成と結びつけられているのもちょっと疑問。東工大という「いい大学」の自負として、歯車になる人でなくリーダーになる人を育てるんだっていう意識(エリート意識的なもの)が見え隠れする……と思ってしまうのはひがみだろうか。リベラルアーツが生きるための知だとすれば、それはリーダであろうとなかろうと身に着けるべきことなのでは。

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2022年02月26日

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やっぱり池上さん好き!(何度もライブ講演会で生トーク堪能)
【わきまえるな】【丸く削るな】良い言葉◎

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2021年10月01日

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リベラルアーツを取り上げた初めての大学が理系の雄、東工大。私の時代にこの3人の教養を分けてほしかった。

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2021年09月09日

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教養って何なんだろう?自分の根っこを太くするって言ってもどうしたらいいのだろう?このような疑問に対して、ある程度はこの本を読んでイメージできたが、やはり難しい。
すべてを疑う、クリティカルシンキング、とがるなど、理解はできても実行するとなると難しいと思う。それを少しでも意識しながら生活することが大切なのだろうか。本書にも述べられているように、特に今のコロナ禍においては、多くの情報が錯綜し、メディアの報道すら一部分しか見えていないかもしれない。自らも正確な情報をとりにいき、かつそれをも疑い、それらの知識をまとめて考え運用し、ベストな選択、行動をする。今の状況は、平時に比べると本書に述べられていることを意識しやすい世の中なのではないだろうか。

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2021年08月27日

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日本のトップにこんなアツい教員がいる大学があって安心する。

学び直す、考え直すとか肯定できたらなーと思ってたところにこの本来は刺さった感がある。

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2022年05月24日

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文章がとても読みやすい。
リベラルアーツが注目されて久しいけれど、
そもそもなぜ学ぶ必要があるのか、
変化の激しい世の中でどういった視点が求められているのか、
そして自分で考えて行動するために、どんな学びが必要か。

今の最先端技術は5年後陳腐化している。
そうした技術ではなく、学び続け研究し続ける力を身につける、というのがとてもしっくり来た。

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2023年01月15日

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本来、自由人であるためのリベラルアーツだが、現代社会には自由市民など少なくなり、社畜と揶揄されるような(あるいは自嘲するような)都合良く洗脳された労働の奴隷が、別の奴隷のためにリベラルアーツを学ぶ時代。現代社会の悲劇として語る上田紀行氏、東工大のリベラルアーツ研究教育院長の発言は非常に考えさせられる

教育の名の下に奴隷を育ててはならない。しかし、そうは言うが、社会にとって有用な人材だから用いられるのであり、それが所謂労働ニーズになるなら、我々は奴隷たることから逃れられず、自由市民にはなり得ない。我々自身も社会からの期待を将来像に設定するから、とがった夢を見ることも叶わない。つまり、社会的動物ゆえ、しかも、奴隷制が廃止された後の概念として、その時代のリベラルアーツをそのまま当て嵌めるのはおかしい話だ。

即効性の高い知識は、環境変化と共に、直ぐに役に立たなくなる。基礎的、古典的な学問は歴史の風化を逃れ普遍的に有用である。ここでも、役に立つか立たないかという話をしている。つまり、元々、自由市民たるべきリベラルアーツは、誰かの役に立つための手段に変化したのではないのか。ならば、リベラルアーツで新たに規定すべきは、単に、古典か流行かという尺度なのかも知れない。メカニカルアーツとの境目がぼやけている。そして、それで良い、と思った。

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2022年09月15日

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