あらすじ
武将の通信簿とも言える『名将言行録』で「脳筋で無学」と評される尼崎藩主・青山幸利(よしとし)。ワケアリ牢人・戸ノ内兵庫が、時代遅れでブラック気質な幸利をできる藩主にプロデュース! 譜代大名・藩と江戸幕府の危機に対処していく凄腕コンサル物語。
四代将軍・家綱の世。戸ノ内兵庫は御三家水戸筋の訳ありな出自のため、幼い頃に命を狙われ、祖父母を目の前で斬殺されたトラウマから、刀を抜かない・人を斬らない主義だ。江戸のさる寺に居候中の兵庫は、藩士が居つかない尼崎藩のため、江戸での人材確保と尼崎での人材育成に関わることになる。
「恐れながら申し上げます」と言いつつも、恐れ知らずの兵庫の助言で、幸利も藩士たちも徐々に変わっていく。
そんななか、由井正雪の遺志を継ぐ一派が、江戸幕府転覆を狙って大坂城乗っ取りを計画。兵庫はその仲間と疑われ、厩番に身分を落とす。落雷により大坂城天守閣が炎上した日、大坂城に駆けつけた幸利は、一派に命を狙われる……。
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Posted by ブクログ
☆3.5が一番感覚に近い感想かな。
さらっと読めるし楽しい。
幸利殿にも兵庫君にも好感で、途中までは、パワハラ解決、お仕事時代小説的なノリで読んでかなり盛り上がった。
が、最後が突然、ちょっとよく分からなかったな。
なんで彼の方と殿が急に仲良しで、兵庫君を取り合って。で、しかも兵庫君は逃げるのか。らしいっちゃらしいし、それだけ尼崎が楽しかったということかもしれないけど、もっと想いが頑固な感じじゃなかったかぁ?とも思うし。抜刀もしかり、な。パワハラ解決の結果もそう。
これはこれで落ち着いてるけど、中途半端感もゼロではなく。
まぁ、結局、日常人情ストーリー、という設定のようなので、やっぱりそんなもんか!と思い直したり(笑)。少しもやっとしちゃったので、3.5にした、という感じかな。
Posted by ブクログ
今でいうブラック企業の社長を主人公が改革、改心?させていく時代小説かなぁと思い読み始めたら良い意味で予想外の内容で、いいじゃないいいじゃないと思いながら読み進めた。
途中からいつ「恐れながら」が出るか、出るかと待ち侘びてしまった笑
時代小説にしては文体が読みやすく、イメージもこちらに寄せて書いてくれているのかスラスラめくれた。
Posted by ブクログ
楽しめた。実在した人物の活躍が、実は周りの人間(非実在)の知恵のおかげだった、という設定になっているのが面白い。当該人物、主人公・兵庫の知恵がトンチが効いていて面白い。一休さんぽいなと思って読み進めていたが、終盤ではけっこうな事件に巻き込まれるので読み応えが出る。あとがきを読むと、作者は青山幸利の登場する小説を描きたかったとのこと。魅力的で憎めない人物であるのは伝わったが、主人公の兵庫、幸利、ともにもっと深く描かれていれば尚良かった。あと、タイトルをキャッチーなものにしているが、あまり中身にそぐわない。
Posted by ブクログ
表紙にブラックやパワハラ等、およそ時代小説に似つかわしくない文字が踊り、タイトルから内容がほぼ想像でき、私以外にも思わず手にした方がいるのではないでしょうか? 結論から言うと、時代小説はちょっと‥と言う方にも、超おすすめです!
殿様をパワハラ上司、藩の体制をブラック企業に例えることで、内容がとても分かりやすく、ストーリーも平易で面白さ倍増です。
殿様は実在した尼崎城主・青山幸利。自身が倹約家だそうですが、義理人情に厚く、誇りをもって熱く責務を全うしようとしたという逸話も‥。
著者は、この辺を匙加減上手にユーモアたっぷりに描いています。殿を決して悪者にせず、下々へ言葉が足りず、伝え方が下手なのだと‥、愛ある"いじり"が伺えます。
ここに登場するのが、殿を補佐する架空の人物・戸ノ内兵庫です。こちらが本作の真の主人公なのでした。冷静で思慮深く、人を見る目がありました。殿の人となりを熟知しているからこその、「殿、恐れながら申し上げます」と(全く恐れていないくせに)進言する様が、楽しく笑えます。
殿だけでなく、陥れようとする勢力も、兵庫の手のひらの上で踊らされているのか、とも思える痛快さが一番のポイントでしょう。兵庫の知恵や手法は、結果的に殿が領民や臣下から慕われる方向につながります。
現代での会社経営や人付き合いの在り方にも合い通じる気がしますし、課題解決のためのコンサルティングと言えるかもしれません。
本作は、決して「ウケ狙いのドタバタ時代劇」ではありません。著者の尼崎城・青山幸利「愛」あふれる、史実と虚構、実在人物と架空人物が織りなす、愉快で良質なフィクションでした。
*祝 尼崎城2019年3月再建!