あらすじ
殺害現場から消えた一枚のメイプルリーフ金貨が臨床犯罪学者・火村英生を真相に導く。
倒叙形式の表題作「カナダ金貨の謎」ほか、火村とアリスの出会いを描いた「あるトリックの蹉跌」、
思考実験【トロッコ問題】を下敷きにした「トロッコの行方」など趣向を凝らした五編を収録。
〈国名シリーズ〉第10弾。
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Posted by ブクログ
偶然、ミステリの分類について調べていたあとだったので、カナダ金貨の謎を読み始めてすぐに、
おお、これがあの倒叙ものか!とわくわくした。
※たしか以前にもあったはずではあるが、もともと細かいことは気にしないタイプなので、その時はあまり調べていなかった。
Posted by ブクログ
ーー
「国名シリーズ」と云えば日本ではアリス・アリスガワなんですよ憶えときな!
安心と信頼のミステリ、なんてものがこの世にあるのならそのひとつ。
クイーン読んでたら読みたくなるというのは必定で、前回『オランダ靴』でバディということばを出したけれど、個人的にコンビとしては江神×アリスよりも火村×アリスのほうが好み。付き合いの長さみたいなものが染み出しているから、というのもあるだろうけれど、掛け合いだとかお互いの、懐に入っている感じなどが安心して読んでいられる。
一編の小説として、ミステリとして、となるとまた変わってきますが。
学生アリスシリーズだと、掛け合い担当は別に居るからなぁ…そのせいってわけじゃないけどあちらで一番好きなのは『孤島ゲーム』である。なんか申し訳ないですねお二方。
というわけで、「あるトリックの蹉跌」は是非。作家アリスと火村英生の貴重な学生時代を覗きつつ、驚きの事実をどうぞ。
ふたりのカップリング感 (なんだそれ)を楽しみたいときは「トロッコの行方」。わたしはコマチさんと同意見です。欲張りで自己満足したがりなんだよな要するに。
もちろん中編ミステリとしての出来も素晴らしいです。ジェットコースター的というか、この場合もちろんトロッコのイメージなんだろうけれど、カチリとポイントが切り替わってからのスピード感が凄い。
表題「カナダ金貨の謎」は国名シリーズの割に少しトリッキーな倒叙型ミステリ。しかしそれが、諧謔的な有栖川さんの筆致にとてもマッチしていて良かった。
安定感も読み応えもある一冊。☆3.6
Posted by ブクログ
第10弾
短編集もいろんなテイストで面白い。 「あるトリックの蹉跌」2人の出会い。他のシリーズとは結局どうなっているのか…アリスが教室で小説を書いていて本当によかった。いつかきちんとした話にして読みたい。 「エアキャット」火村は登場しないのに火村の物語になる。 事件がごっつりしているのに、ふたりの掛け合いが妙に面白くて、本音の友達いいなって毎回思う。朝井先輩は変な空気取り込まないから好き。 表題作よりも、「トロッコの行方」の方がずしんと心にきた。犯人の気持ちわかるし、誰が悪いか、人次第。
Posted by ブクログ
分厚い長編『双頭の悪魔』(学生アリス・江神二郎シリーズ)を読んだ後での、短編集(火村シリーズ)。
なんだかファンタジーと悲壮感漂う江神シリーズと比べるに、火村と作家アリスのこの本は、適度に俗世であり、大人である。
次々と運ばれてくるフルコース料理のような長編に比べると、主菜副菜、野菜、箸休めなどがバランスよく詰められたお弁当のような本。
メインの「カナダ金貨の謎」が、やはり、う〜んとうなる出来だった。
工作しようとしたけど出来なかったとか、それは未遂だったけれど思いつきはよかったのに、とか、追い詰める側と追い詰められる側の描写が交互にあり、楽しめた。
『船長が死んだ夜』
近くで殺人事件があったから行ってみる?みたいな二人が・・・(苦笑)
勘違いが元の殺人なのか否か
『エア・キャット』
偶然が重なった?いや、報いが来たのか。
「三四郎」という単語、卵が先か鶏が先か。
『カナダ金貨の謎』
トリック未遂で崩される。
このカナダ金貨は、もしかしてそういうアイテムなのか?というオカルト要素も残す。
『あるトリックの蹉跌』
アリスと火村の出会い。
『トロッコの行方』
「トロッコ問題」は聞いたことがあるような、無いような・・・
究極の選択の一つである。
自分的には、そもそもポイントの近くに居たく無い。
いきなり横から違う回答をしてきた、的な結末が!!!
でも、あるかもしれないですね。
Posted by ブクログ
もう30年近く?もの長きに渡って続く火村シリーズですが、時代の流れに乗って最新機器なども自然に取り入れ、読むごとに火村&アリスについて新たな発見ができることに感嘆します。私の中で、この二人のコンビを越えるホームズ&ワトソンコンビは、今後も現れないような気がするなぁ。
火村のSOSから始まる「船長が死んだ夜」。犯人を罠に嵌めるやり方は、このシリーズには珍しいような気も? 船長の寝言と犯人の名前とのつながりは、少々苦しいというか、これをやりたかったがための「船長」だったのかなぁ、などと野暮な勘繰り……。
準レギュラー二人の登場が嬉しい「エア・キャット」。幻の猫が現実になる日も近いのかな? どうでもいいですが、マスターのキャラが濃かったので、彼も準レギュラーだったけかと錯覚しそうになりました(笑)
表題作「カナダ金貨の謎」。筆者は倒叙形式も書くのが上手い……! 解説にもありましたが、犯人視点からの火村&アリスの描写が、読者の目にはとても新鮮で、愉快ですらありますね。
そしてこのコンビファンには垂涎ものだろう「あるトリックの蹉跌」。あったあった、こんなエピソード、と懐かしみつつ……なんとその小説の「トリック」が明らかになる日が来るとは! 手書き原稿の付け足しの痕跡や、アリスの発言やリアクションから推理を組み立てる学生火村がスマートです。若い二人のやりとりがよそよそしいのが堪りません(笑)
まさかの「逆〇裁判」としか思えないゲームの登場に驚かされた(笑)、「トロッコの行方」。序盤のハイになっているアリスの「聞こう!」と、火村の「黙って聞け!」に、電車の中で噴き出しそうになりました。今巻、このコンビ絶好調ですね……。