あらすじ
ただ漫然と映画を見ていませんか? 本書は、「映画の見方」を教える本です。数百名以上の大学生を感動の渦に巻き込んだ「日本一わかりやすい映画講師」が、鑑賞にあたって知るべき事前知識から、撮影テクニック、場面展開、シーンの「意味付け」に至るまで、『東京物語』『ボヘミアン・ラプソディ』など不朽の名作を題材にして、映画を学びに変える鑑賞法を講義形式で解説します。本書がめざすのは「能力の底上げ」。作品のメッセージが手に取るようにわかるようになれば、感性が磨かれ、教養を深めることができます。映画を意識的に見ることで、人間としての魅力や人生の向上にもつながります。ネット動画をついダラダラ見てしまう方、口コミや評判をもとにコンテンツを享受しているような方にこそ、自分を変えるきっかけにもなる一冊です。さらに、「何からみればいいの?」という人に向けて、洋画・邦画合わせて200以上のおすすめ作品を紹介。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
漫然と映画を見ず、細部に注目していきたいと思える本だった。
・映画を通して感情の起伏を積み重ねていくと、自分の感情の振り幅が分かるようになる。自分はどういう人間なのかを知ることにつながる。
・他の人の人生を2時間ほどの短時間で疑似体験できる。
・その国の映画を知っていることは、それ自体が武器。
・オバマ元大統領の毎年発表しているお気に入りの映画リストはセンスが良い。
・キネトスコープが神戸で初めて上映された12月1日が映画の日だから1日はサービスデーの映画館が多い。
・映画の製作、配給、興行を一手に握ったパラマウント、20世紀フォックス、ワーナー・ブラザーズ、RKO 、MGMはビッグ5。直営の映画館を持たないユニバーサル、ユナイテッド・アーティスツ、コロンビアはリトル3。
・小津と是枝の共通点。フラッシュバックを使用しないで、過去の話は登場人物の会話で処理。
・是枝映画に現れる風呂は、家族が親密な関係を維持するために欠かせない場所。
・映画の著作権保護期間は改正によって複雑になっている。
・ボヘミアンラプソディーライブエイドのシーンは実際は21分ではなく13分。カット数が多く切り替えが早いため、時間が短いのに気づかない。
・映画の記録は監督やスタッフも記録すると感度が上がる。
・小津安二郎の彼岸花。グラスや皿の高さを統一して女優の手のための空間を用意し、結婚指輪の有無を際立たせている。
Posted by ブクログ
古典的ハリウッド映画の特徴は、何よりもまず「物語を優先する」点にあります。
各種の技法は、効率的な語り(語りの経済性)を実現させるために動員されています。これによって観客を映画のなかに引き込み、我を忘れて物語に熱中する「夢の時間」を作り出すのです。
登場人物の動機や物語の因果律(原因と結果)を明白に示し、ハッピー・エンドで締めくくること(あるいはあいまいさの残らない完結したエンディングにすること)も特徴の一つです。
ほとんど無限とも思えるほどの大量の映画作品を前にして、どうやって今日これから見る1本を選んだらいいか――。
入門段階においては、あえて情報量に制限を描けることも有効です。
そこで、私がみなさんにオススメしたいのが、古典的名作とされる映画を選択的に見ることです。
村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』の登場人物に永沢という古典文学の愛読者がいます。彼は「時の洗礼を受けていないものを読んで貴重な時間を無駄に費やしたくない」という理由で、「死後三十年を経ていない作家の本」は原則として手にとらないようにしています。
文学に比べて歴史の浅い映画の場合、「作者の死後三十年」は「公開から三十年」を読み換えるのが妥当なところでしょうか。もちろん、これはあまりの極端なポリシーです。
しかしながら、「時の洗礼」という観点はなかなかどうして核心を突いています。
似たようなテーマを繰り返し取り上げる小津の姿勢は、同時代の批評家や若手の監督たちからもたびたび疑問視されていました。それに対して小津は自身を「トウフ屋」になぞらえて煙に巻くのを常にしていました。
いつも同じような作品だと人にいわれるがわたしは自分をトウフ屋だと思っている。トウフ屋では焼ドウフ、ガンモドキ、アブラアゲしか出来ない。トウフ屋にシチューやトンカツをつくれといってもムリだ。それはトンカツ屋にまかせればいいので、サシミとトンカツが並んでいるような店は大ていうまくない。だからデパートの食堂はまずいんだよ。
また、別の機会には「トウフ屋」の例を挙げたあとで、「ひとには同じように見えても、僕自身はひとつひとつに新しいものを表現し、新しい興味で作品に取りかかっているのです。何枚も同じバラを描きつづけている画家といっしょですよ」と答えています。
素人が適当に撮った映画は独創的なのではなく、多くの場合、たんに粗雑な印象を与えるだけです。ルールを知らず好き勝手に撮るのと、知っていてあえてそこから外れるのとはまったく違います。
「批判」はたんに悪口を言うことではありません。
この言葉の第一義的な意味は「物事に検討を加えて、評価・判定すること」であり、そこには良い点を見つけることも含まれます。「批評」もこれとほぼ同じ意味を持つ言葉です。