あらすじ
ヒトラーはすべてをこの男から学んだ。
経済格差やコロナ禍で世界が不安、恐怖に覆われるなか、再び独裁的な指導者の力が増している。
20世紀における独裁の象徴が、イタリアのムッソリーニだった。あのヒトラーが師と仰いだ男でもある。両者はしばしばファシストと称され、一括りに非難される。だが、その行動と思想は大きく異なる。2人の政治家はどこがどう違うのか? ナチズムとファシズムは何が異なっているのか。
ムッソリーニの思想、行動、そしてイタリア国民の熱狂の過程を詳細に辿ることで、現代社会の危うさも見えてくる。
<著者プロフィール>
舛添要一(ますぞえ・よういち)
1948年福岡県北九州市生まれ。1971年東京大学法学部政治学科卒業。パリ(フランス)、ジュネーブ(スイス)、ミュンヘン(ドイツ)でヨーロッパ外交史を研究。東京大学教養学部政治学助教授などを経て、政界へ。2001年参議院議員(自民党)に初当選後、厚生労働大臣(安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)、東京都知事を歴任。著書に『都知事失格』、『ヒトラーの正体』など。
(底本 2021年8月発行作品)
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Posted by ブクログ
「ヒトラーについてはその悪行を知っているが、ムッソリーニについては何を行ったかすら殆ど知らないのではないかー」そんな疑問から手に取った一冊。そう、あの悪名高きファシズムの創始者でありヒトラーより10年長く政権を保ち得たムッソリーニの事を私は、というより日本人は知らなすぎるのである。一般的な認識は第二次世界大戦における敗戦国の指導者の1人でしかないだろう。ある程度歴史を勉強している人間でも「ローマ進軍」や「エチオピア侵攻」程度しかイメージがないのではないだろうか。
本書ではムッソリーニがファシズム政権を獲得するまでの紆余曲折やヒトラーのナチズムとの対比、そして彼が外交上どのような動きをし、なぜ破滅したのかを詳細に記している。何より驚くのはファシズムの社会主義との親和性、そしてムッソリーニが第二次世界大戦のかなり近い時期までドイツに警戒感を抱き、イギリスとの協調を基本路線としていた事だ。特に後者に関しては1930年代イギリス融和政策の最大の失敗はドイツがイタリアに接近する余地を産んでしまった事ではないかと思うほどである。この外交的失敗さえなければ、ムッソリーニはせいぜいスペイン・フランコ政権程度の評価に落ち着いていたのではないだろうか(別にフランコを褒めているわけではないので、誤解なきよう)。
おしむらくはムッソリーニの国内政策についての記述がやや薄い事だろうか。資料が乏しい可能性があるため仕方がないのかもしれないが、少し残念である。
Posted by ブクログ
ヒトラーは有名だが、ムッソリーニにはそれほどでもない。
ヒトラーの事は大体知っていることが多い(前著「ヒトラーの正体」)が、ムッソリーニのことはほとんど知らなかった。
ファシズムというと、ナチズムも日本の軍国主義も十把ひとからげに、指すことが多いが実は違いは大きい。
ムッソリーニは、もともと社会主義者であり、教師として実際に教鞭をとっており、学校の成績もよく、スポーツや音楽をこなし、また、女性関係も派手だった。ヒトラーとの共通点は一つもない。
そしてヒトラーより10年早く政権を獲得したムッソリーニは、ヒトラーにとってあこがれであった。それが、第二次世界大戦がはじまって立場は逆転してしまう。
本書ではあまり知られていなかったムッソリーニについて豊富な情報がありおどろきの内容だ。
ただ、なぜか、重複した内容を述べているところが多い。編集はもっとちゃんとしてほしい。
次はスターリン、そして毛沢東、金日成と独裁者列伝を続けてほしい。
Posted by ブクログ
ムッソリーニの思考が読めないなと改めて感じた。
母親が連れてってくれる協会が嫌いだったのに、ローマ進軍で国王と和解(?)するし、ヒトラーに乗っとってユダヤ人迫害を行うけど、自分はユダヤ人女性と関係を持ってたり、、矛盾が多いなと思った。
Posted by ブクログ
「ヒトラーの正体」に続く舛添要一さんの本。
舛添さん、政治家としての評価は微妙でしたが(笑)、著書は丁寧な書きぶりで読みやすいです。
ファシズムといえばヒトラー、ってイメージですが、実は元祖はムッソリーニ。ヒトラーもムッソリーニを師と崇め、執務室には彼の胸像を置いていたそうです。
ただ、第二次世界大戦においては伊は独の足手纏いとなり、いつの間にか立場が逆転してしまっていたようですが、これはあくまで冷酷だったヒトラーと、冷酷に徹しきれなかったムッソリーニの独裁者としての器(?)の違いなのか…
ただ、共通しているのは、独裁に至るまでは当時の合法的なルールに則りつつ、それ以後は好きなようにルールを変えて独裁者としての地位を固めていった点や、経済政策の成功で支持を集める一方、敵を作って攻撃することで国民の熱狂を煽っていったといったところでしょうか。
特に後者は現代では必須の政治スキルになっているようですが、社会への不安が増大する時代には、その手法が流行るんだろうけど、これは社会を分断するだけで憎悪しか残らないので、やり方としては大いに憎むべきものだと思いますね。
とにかく、読み物としてはとても面白かったです。
Posted by ブクログ
国際政治学者であり、政治家でもあった舛添氏が、ヒトラーに比べてその実情があまり知られていないムッソリーニの生涯と人物像を、第一次・二次世界大戦の各国の思惑やヒトラーとの関係などと絡めてまとめあげている。複雑な当時の世界情勢が分かりやすくまとめられている。自身も政治家を経験したことが本書を書く上で大きく役立ったそうだ。
名前は知っていてもナチスドイツに比べてムッソリーニ、ファシズムに関しては確かに、あまり知識がなかった。暴力を用いながらも「大衆の圧倒的な支持を得て」政権を取ったことなど共通点はあれど、戦争に関わる考え方などは大きく違う。また、ファシストの中の暴力的な勢力の制御に手を焼き、慣れない外交に苦労して胃を痛めるなど気の小さい面が多々見られ、またヒトラーや日本軍と違い、イタリアの戦力が弱く「長期戦を戦えない」ことを自覚してなるべく戦争を避けたいと行動していたなど、意外な面が多かった。
複雑なムッソリーニの人物像、ヒトラーとの押したり引いたりの関係、当時の世界情勢を駆け足で読め、なかなか興味深かった。
Posted by ブクログ
ヒトラーと比較して全然知識がない(ヒトラーについても書籍は1-2冊程度しか読んだことはないけれど)自分であるが、この書籍は読みやすかった。こんな時代だからこそ知っておく価値はあると思う。
Posted by ブクログ
元東京都知事、国際政治学者舛添要一さん著
共産党の赤に対抗し黒シャツ隊を率いた男は
兵役後小学校教師から社会主義系新聞編集長を
経て独立後混乱続く伊を束ねて政権樹立。
選挙法改正、財政再建し経済発展も
エチオピア戦争仕掛けるも戦闘力ダメダメで
敗戦。悲願未回収のイタリア奪還でヒトラー
に近づきすぎて日独伊同盟で第二次世界大戦へ。
特に反感なくもヒトラーの政策に追随し反ユダヤへ。
ファシズムとは伊語(束ねる、集団、結束)
1919年ファシストの綱領は女性を含む18才以上全員
参政権、王室上院世襲の称号の廃止、8時間労働
教会資産の没収、富裕者の土地収用、資本の累進課税
など左派的考え方であったがヒトラーも社会主義系からスタートしておりスターリンを含めなぜか独裁者になってしまう。代議制民主主義の将来についても考えたい