あらすじ
人々の語る「ナラティブ」がいかに経済に影響を与え、経済を動かすかを分析した画期的な本。
世界を変えるニューテクノロジーに取り残されるわけにはいかない(ビットコイン)
ニューテクノロジーは雇用を破壊する(AI)
チューリップが売れるには合理的な理由がある(金融ウバブル)
銀行は大きすぎて潰せない(金融規制)
住宅価格は決して下がらない(不動産バブル)
あるナラティブは根拠なき熱狂となって人々の信念を変え、人々の行動を変えて、マクロ経済を大きく動かしてきた。
どうしてあるナラティブだけが繰り返されて、人口に膾炙していくのか?
ナラティブはどのようなメカニズムで、通説化し、人々の心をとらえるのか?
過去に語られてきた、有名なナラティブとはどのようなものか?
脳科学的に、人々はなぜそうしたナラティブを創り出したがるのか?
アニマルスピリット、それでも金融は素晴らしい、不道徳な見えざる手、と、現実経済を理解する上で
深い洞察を示してきたノーベル賞経済学者が、新しい経済学の方向を示す。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これまでの経済学では人間を合理的な存在として考えていたが、実際、人間の行動はそんなに合理的ではない。
経済変化の中にナラティブ(ある特定の物語や物語群の形)の感染を組み込む必要がある。
経済学からほど遠い自分としては、むしろこっちのナラティブ経済学の方がしっくりくるように感じたり。
これからは、人々のナラティブがSNSなどでデータ収集しやすくなる。そうすると、経済の予測もしやすくなるのだろうか?
ただ、この本の具体例はアメリカのものが多く、正直よく分からなかったり…
以下メモ
・ナラティブ経済学を研究することで、経済の変化を理解する、より良い予測ができるようになる。
・ヴァイラル(viral) :ウイルス性の。疫病のように人から人へとうわさが広がり伝染する
・通俗ナラティブの例:ビットコイン
ビットコインは皆が価値あるものと思わなければ何の価値もない。他の人がビットコインに興味を持つから、他の人も関心を持つと信じているから価値が出る
・人が物語を伝えるときにはオキシトシンとコルチゾールの分泌が高まる。人は物語を伝えたい性質。
Posted by ブクログ
20230324-0503 ノーベル経済学賞受賞者で、恐怖指数など様々な経済分析の手法を
提唱しているロバート・シラー教授による新たな経済分析手法についての紹介本、といえばよいのだろうか。人々の語る「物語」=ナラティブに人々は魅了され、熱狂し、経済を動かし時にはバブルも生じさせるということか。訳はこなれていて読みやすいが、自分の読書速度が著しく遅いので大変時間がかかってしまった。筆者の提言にすべて納得できるわけではないが、日本のバブル経済の熱気を思えばそうなのかもしれない。
Posted by ブクログ
ノーベル賞学者、ロバートシラー教授の本なので、期待して読んでみた。
ナラティブ経済学、物語経済学による「全く新しい経済予測の考え方」ということだったが、、、
グーグルNグラムという過去の文献のテキストマイニングデータを使った、経済史とキーワードの振り返りが主で、少し冗長だった。
あれ?経済予測は??補遺の数式を解けってこと??
Posted by ブクログ
まだ未完成の領域ながら、経済指標だけで経済予測しようなんてのが不十分なのはその通りだと思う。世間の気分を検索ワードで数値化したら疫病感染と同じような曲線になって、、、、それが実際の経済にどう影響するかの因果関係の説明が雑で、例を挙げているけど、複雑すぎて実態把握は不可能かもしれないが。
Posted by ブクログ
経済ナラティブというのは、人々が経済的判断をするやり方を変えそうな、感染性の物語を指す。経済的判断とは、労働者を雇うか好機を待ち続けるか、事業でリスクを負うか慎重になるか、事業を立ち上げるか、変動の激しい投機的資産に投資するかといった判断だ。経済ナラティブは通常、流通している中で最も有力なものではないし、それを見極めるには、それが経済的行動を変える潜在力を見る必要がある。ビットコインの物語は成功した経済ナラティブの一例だ。きわめて感染性が高く、世界の相当部分でかなりの経済的変化をもたらしたからだ。本当の起業家的な情熱をもたらしただけではない。少なくともしばらくは、事業の安心感を茂樹したのだ。
■経済ナラティブ 7つの主張
1.流行は速度も規模も様々。流行の時間軸や規模には大きなばらつきがある。
2.重要な経済ナラティブは世間的な話題のごく一部でしかないこともある。ナラティブはあまり耳に入らなくても、経済的に重要かもしれない。
3.ナラティブ群は単独ナラティブのどれよりも影響が強い。群れが重要だ。
4.ナラティブの経済的な影響力は変化するかもしれない。ナラティブが時間とともに発達する中で変わる細部が重要だ。
5.虚偽のナラティブを止めるには、真実だけでは不十分。真実は重要ではあるが、それは本当に有無を言わせないくらい明らかなときだけ。
6.経済ナラティブの感染は反復機会を利用する。強化が重要。
7.ナラティブはつながりで栄える:人間的興味、アイデンティティ、愛国心が重要。
■繰り返さない経済ナラティブ
1.反復と変異
2.パニックと不安
3.倹約VS顕示的消費
4.金本位制VS金銀本位制
5.労働節約機械が多くの職を奪う
6.オートメーションと人口知能がほとんどの職を奪う
7.不動産バブルとその崩壊
8.株式市場バブル
9.ボイコット、不当利益、邪悪な企業
10.賃金物価スパイラルと邪悪な労働組合
本書で私は、一段落丸ごともある引用を異様なほど多用している。それは読者に、影響力を持ち、同じ言葉で繰り返されたら再び影響力を持ちそうな過去のナラティブについて、歴史的な感覚を示したかったからだ。ジョークや歌と同じで、効果的なナラティブは、単語とその語り口がちょうどよくなければいけない。
■訳者あとがき
…人々の経済行動を操る物語をどのようにして考えるべきか?特にミクロ経済レベルで個人がだまされたというレベルにとどまらず、マクロ経済的な景気循環にまでそうしたナラティブは影響しているのではないか?すると、社会全体に流通するナラティブの興亡をたどることで、その後の経済変動について示唆が得られるのではないか?特に現在、ニュースや新聞記事、書籍内の用語登場頻度の検索を通じて、世間的なナラティブの普及や流通について計測しやすくなっている。最近ではツイッターやSNSなどで、各種のナラティブの普及の様子を細かく追えるようになっている。これを使えば、各種の文化や概念的な流行と経済変動との関係を定量的に分析できるのではないか?
ミクロ経済学の方面では、人が様々な物語などを聞いてプライミングされ、経済行動を変える話が行動経済学で大量に実証的に示されている。数字の上ではまったく同じ利得の選択でも、それをどういう文脈で、どういう言い方で提示するかにより、人々の選択は変わる。そしてそれを政策的にどう活かすかについても、…、各種の「ナッジ」戦略などが提起され、人々の健康保険加入や給与天引き式の年金貯金の促進など、具体的な成果も上がっている。
マクロでも同じことができるだろうか?著者はできると述べて、様々なナラティブとそれに影響された(と称する)景気変動の例を挙げ、ナラティブ経済学的なアプローチの重要性を指摘するとともに、今後のナラティブ経済学発展に向けた方向性について述べる。