【感想・ネタバレ】コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たちのレビュー

あらすじ

日本軍の真珠湾攻撃が迫る1941年11月、アメリカ海軍から東部の名門女子大に宛てて「秘密の手紙」が送られはじめた。そこには、敵国の暗号解読に当たれる優秀な学生がほしいと記されていた――。第二次世界大戦中、米陸・海軍に雇われ、日本やドイツなど枢軸国の暗号解読を担ったアメリカ人女性たちがいた。外国語や数学をはじめとする高等教育を受けた新卒者や元教師らが全米各地から首都ワシントンに集い、大戦末期には男性をしのぐ1万人以上の女性が解読作業に従事した。その働きにより、日本の外交暗号(通称パープル)や陸軍の船舶輸送暗号が破られ、枢軸国側に壊滅的な打撃を与えた。ミッドウェー海戦での米軍の勝利、山本五十六連合艦隊司令長官の殺害作戦の陰にも彼女らがいた。一方、大西洋戦域においてはドイツのエニグマ暗号を解明してUボートの脅威を排除し、ノルマンディー上陸時の欺瞞作戦でも活躍した。こうした功績がきっかけとなり、それまで女性には閉ざされていた政府高官や大学教授など高いキャリアへの道が切り拓かれることになる。戦後も守秘義務を守り、口を閉ざしてきた当事者らへのインタビュー、当時の手紙、機密解除された史料などをもとに、情報戦の一翼を担った女性たちに光をあて、ベストセラーとなったノンフィクション。口絵写真33点を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

世界大戦を変えた女性たちの物語。

第二次世界大戦のアメリカでは、実はたくさんの女性たちが暗号解読に従事していた。インテリジェンスの分野で活躍した女性たちの秘められた歴史を明かすドラマティックな一冊。

自分の祖母も戦争中のことを語らなかった。亡くなった後で大陸で教師をしていたらしいことがわかった。話を聞ければよかったと思うが、祖母にとっては話したくないことだったのかもしれないし、語るべきことではなかったのかもしれない。この本を読んでそんなことを思い出した。

女性たちには暗号を扱う力があった。戦争で男性たちが足りなくなったから女性たちを採用した面が大きいだろうが、結果的にそれが功を奏した。しかし女性たちが正当に扱われたかといえばそうではないこともあったようだ。戦後に自分のしたことを語れなかった者がいた。お払い箱のように職場を去らなくてはならなかった人もいた。結局アメリカも「男は外で働く、女は家を守る」という発想が強い。また武器を持って前線でひどい経験をした兵士たちと同様に精神を病んだ人もいたようだ。直接的でなくても人の命を奪う仕事だったのだから。『戦争は女の顔をしていない』でも思ったが、戦時中にそれぞれの場所で戦った(特に軍属の)女性たちへのフォローが不十分なのか、この国も。

そのような女性たちの誇り高き仕事に光を当てる作品である。苦悩も活躍も描かれている。分厚くて登場人物が多くて読みにくい部分もあるが、惹きつける本だった。戦時中の任務だから話せない部分もあったのだろうが、やはり女性たちのしたことだからという点で知られていなかった部分もあるのだろう。この本の反響が大きかったことが最後に書かれている。人を揺さぶる作品である。

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦時中のアメリカ、他国の通信を読み取るために軍隊で暗号解読の任務についた女性たちの話。
日本の使っていた暗号は連合国側にばれていて、通信が筒抜けだったという話は聞いたことがあったけど、あらかじめ符号を手に入れていてスマートにささっと暗号を解読するようなイメージだった。それがこんなに大勢の人員で、血のにじむような努力を何年も必死で続けて成し遂げていたのだとは知らなかった…。しかもそれは戦地に赴く男性の代わりに集められた優秀な女性たちで、戦争が終わって長くたった後でさえ任務について称えられるどころか話すことすらできなかったとはびっくり。
当時の女性の一般的な生活ではありえないような重要な任務に携わる充実感と、自分たちの働きが男たちの命運を文字通り握るという重圧。戦後は速やかに「家庭に戻る」ことを求められた彼女たちの、その後の生活も明暗が分かれたという。精神を病む者、家庭を飛び出して仕事で成功する者、軍に残って出世する者…。戦地の話ではないけれど、才能ある女性たちの生き生きした仕事ぶりと戦争の光と影を生々しく感じられる本だった。

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2022年08月31日

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