あらすじ
【内容】
人間は「自己否定感」を刺激されたときに最もエネルギーを発揮する生き物です。
「自己否定感」というのは、世の中ではとんでもない悪役にされていますが、じつは努力、頑張り、向上意欲などの源泉でもあります。
経済が大きく成長し、文明が素晴らしく発展してきたのも、「自己否定感」を社会の推進力に使ってきたためです。
こうして、人類社会は、過去数千年間にわたって「自己否定感」に秘かに支配されてきました。
しかしながら、いままさに、人類はそこから卒業しようとしています。
人類全体に、ひとつの意識の変容の大きな波が押し寄せてきているのです。
本書は、そうした背景の中で、人生を豊かにするために必要な「希望の光と指針」を見出す案内書となるはずです。
【目次】
第1章 社会の上層部の人ほど「自己否定感」は強い?
第2章 キリスト教の「原罪」と人類共通のもの
第3章 心の奥底に巣くうモンスターたち
第4章 あらゆる争いの源にあるもの
第5章 「怖れと不安」を刺激する社会
第6章 大企業で起きた「シャドーの投影」
第7章 天外が講演中に泣いた日
第8章 「蝶」が飛んでいる「安心・安全の場」
第9章 「怖れ」がなくなると計画や目標もいらない?
第10章 人類の目覚め
第11章 これからの日本が進む道
【著者】
天外伺朗(テンゲシロウ)
工学博士(東北大学)、名誉博士(エジンバラ大学)。1964年、東京工業大学電子工学科卒業後、42年間ソニーに勤務。
上席常務を経て、ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス 研究所(株)所長兼社長などを歴任。
現在、「ホロトロピック・ネットワーク」を主宰、医療改革や教育改革に携わり、瞑想や断食を指導。
また「天外塾」という企業経営者のためのセミナーを開いている。
さらに2014年より「社員の幸せ、働きがい、社会貢献を大切にする企業」を発掘し、表彰するための「ホワイト企業大賞」も主宰している。
著書に『実存的変容』、『「ティール時代」の子育ての秘密』、『「人類の目覚め」へのガイドブック』、
『ザ・メンタルモデル』(由佐美加子・共著)、『自然経営』(武井浩三・共著)など多数。
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Posted by ブクログ
著者は、昨今の学校や会社では激しい競争状態が作られ、恐れと不安を刺激して「自己否定感」が強化されていると危惧する。さらにはこの恐れを掘り下げると死の恐怖に繋がっており、これらの「自己否定感」は「抑圧されたネガティヴな衝動」でもある。
これらの衝動による不快感が意識レベルに上がってくると、その存在理由を自分の外側に捏造し、逃れようとするのが人間の習性とのこと。例えば、他者にそれを投影して、その他者を激しく責める行動を取ったりする。だから、人は自分の醜い部分を持っている他者を忌み嫌い、必要以上に否定しようとする。
では、この決して健全と言えない状況から、どう脱却するのか。著者は、強い戦士として突っ張るのではく、感情が揺れ動き、弱く、欠点だらけの、ありのままの自分の姿を晒すことの重要性を説く。別の言い方をすれば、「情動の蓋を開ける」ということ。
もし、取り返しがつかないほど評判が落ちるのではないか、後ろ指を刺されるのではないか、という強い恐怖心を持っているとするなら、そこから1歩踏み込み、その「恐れ」を抱いている対象事象そのものを体験してみると良い。往々にして、元々の予想に反して大したことにはならないということに気づく。
平気で自分を晒すことができるようになれば、「自己否定感」は小さくなっていく。同時に自身が所属する組織に「安心・安全な場」ができ、周りの人間も同じように鎧を脱ぎ始めるという好循環が生まれてくる。
まずは、自分のみっともなさを、勢いよく晒して見よう。
Posted by ブクログ
著者の土井利忠氏はソニーの元役員。ソニー在籍中から使用しているペンネームである「天下伺朗」は、1970年代の手塚治虫の名作漫画(怪作?)の「奇子」の登場人物名であり手塚氏本人からの承諾を得て使用しているらしい。
奇子という作品は、手塚作品としては珍しくエログロが明確に描かれている大人向けの作品。戦後のゴタゴタ期から作品執筆当時(1972年)までの東北の豪農ファミリーを舞台とした業の深い話だ。伺朗という人物は、兄の殺人事件を告発しようとする正義感が強い人物なのだが、異母妹(作品タイトル名でもある奇子)との近親相関に悩むという屈折したキャラクターだ。土井氏がどうしてこのペンネームを使用しているかについては不明。
数か月前に妻がこの本を読みだした時、「なんて悪趣味なペンネームの作家がいるもんだ」と思って眺めていたのだが、手に取って読んでみたところ、とても面白い。
人はみな深層意識にある自己否定感をエンジンとしているということを議論の出発点としつつ、「常に天敵を作る」タイプの人の分析へと進む。土井氏(天外氏)がソニー時代に、当時の同社CEO出井氏と大喧嘩をしたエピソードを紹介し、彼が出井氏を「敵」と位置付けたのは彼自身の心の問題と振り返っているのは面白い。(それでも、彼が出井氏をいかに嫌っているかということは良くわかる。)
私は、「あの人が嫌い」「あの人と話すとムカついて自分の気持ちが落ちてくる」という人や、自分の領域が侵食されたと感じたとたんに激昂するタイプの人の心理メカニズムが理解できないのだが、この本を読んでそういう人たちの心のステイタスが少し理解できた気がした。
漫談のようにチャプターことに色々な話が紹介されているのだが、Open Space Technologyという組織や会合の運営の考え方が興味深かった。これは、お茶してだべるだけの「蝶」と、あちこちの議論に顔をつっこむ「蜂」の存在により組織が活性化するという話。
Posted by ブクログ
深層心理学やら、トランスパーソナル心理学、各種宗教の理論を網羅的に整理して紹介している本。
自己否定感に基づき、不安、恐怖に駆られた努力、成長から解放されて、実存的変容を遂げると次はティールになるとのこと。ティール組織の本が、メジャーになる中で、実際この様な流れはあるのかも。
実存的変容を遂げる前の実存的危機『自分は何者で、人生の目的は何か』という段階は、ミッドライフクライシスやら、キャリアコンサルタントの話にも似ていると感じた。こう言う、心理学とかの世界では、共通認識なのかもしれない。
自我の発達モデルというのは、悟りを開くという流れとも似ているので、分かりやすいが、その先の神秘体験やら、チャネリングの話が出てくると少し胡散臭く感じて警戒する自分がいる。そしてまた、そうした自我の発達と、社会モデルを関連付けて、社会の発展モデルまで示されると、社会は一方向的に発展するという観念が言われている様で、何方かが遅れている社会と言っている様にも感じて嫌気がさす。途上国の社会も、伝統的なコミュニティにも其々良いところはあり、多様性と其々の価値を見出す文化人類学的な視点とぶつかる様な印象を覚えたが、これは穿った見方だろうか?そして、私は実存的危機に悩んでるから、そこから脱する方向としてこの理論に基づく自己変容を目指していくことなるのだろうけれども、皆んなが皆、悟ることで社会が発達するよというのは、なんとも気持ちの悪い感じがする。