あらすじ
〈英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作〉臨床心理士のサイラスが施設で出会った少女イーヴィは嘘を見抜ける能力を持っていた。そして、彼らは警察の要請で女子スケートチャンピオン殺害事件の捜査に加わる。将来を期待されていた選手に、何が起こったのか――世界各国で激賞された傑作ミステリ 解説/吉野仁
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Posted by ブクログ
「哀惜」の後ろの広告で見て。
どうして人は、特殊な才能を持つ人間に引き付けられるのだろう。
ミレニアムのリスベットしかり、
「ストーンサークルの殺人」のティリーしかり。
いや、キャロル・オコンネルのマロリーや
ジェフリー・ディーヴァーのキャサリン・ダンスには、
それほど惹かれないので、
この作品のイーヴィの魅力はそれだけではないらしい。
イーヴィは嘘を見破る少女。
ある民家の隠し部屋に隠れていたのを発見され、
エンジェル・フェイスと名付けられた。
いろいろな調査にもかかわらず、身元は特定できず、
問題のある子供たちの養護施設で自称18歳を迎えようとしていた。
もう一人の主人公のサイラスも、
兄によって両親と双子の妹たちを殺された壮絶な過去を持つの臨床心理士。
イーヴィがいる養護施設で職員をしている大学時代の同級生に頼まれ、
彼女に会う。
サイラスは警察の捜査にも協力していて、
アイススケートのチャンピオンの女子中学生が殺された事件も追っていく。
(下巻へ続く)
Posted by ブクログ
とある花火大会の夜のお祭りムードの翌日、学校で人気のスケートチャンピオンの少女、ジョディが帰宅していないことが判明。
その後、凌辱の痕跡と共に死体で発見されるという至ってありきたりな展開。
容疑者もすぐに見つかるが、いかにも冤罪っぽいなぁというにおいぷんぷん。
主となる事件の展開だけを見ると、ありきたり感満載なのだが、この事件解決の過程を盛り上げる味付けとしてのヒロイン、イーヴィと、その保護者替わりのサイラスのキャラクター造形、彼らの過去を種としたサイドストリーが秀逸でぐいぐい読まされる。
イーヴィはかつて世間を賑わせた事件の関係者。
腐乱死体が発見された建物から、後日隠し部屋から見るも無残なほど不衛生な状態で救出された”箱の中の子”、”エンジェル・フェイス”。
人の嘘を見抜く力を持ち、人間関係で常にマウントを取れる異能力者だが、かつての事件の心理的影響からか、社会適応性が著しく低く、その暴力性から児童保護施設で暮らす日々。
知人からの相談をきっかけに心理カウンセラーとして彼女と出会ったサイラスは、彼女を里子として引き取ることを決め、一緒に暮らし始める。
サイラス自身も兄が家族を惨殺した猟奇的事件の被害者であるが、当時新米、現在は少女殺害事件の捜査責任者、レニーの保護下に置かれ、現在は臨床心理士として自立している。
レニーから少女殺害事件への協力を求められ、被害少女には隠された面があると睨み調査を進めるが、やはりきな臭いにおいが、、、という上巻。
下巻はイーヴイの能力が事件解決に影響を与えることになるんだろうなぁ。。
いや、面白いシリーズものが出てきました。
Posted by ブクログ
おじさんと少女という探偵もので、読んでいる最中に「ストーンサークルの殺人」が脳裏をチラついた。(あちらは少女ではないが、良い凹凸コンビ)
こちらの方は二人とも不安定な感じがして、ミステリーパートと二人のきずなをはぐくむパートとが並行している。イーヴィは最後にはまた施設へと戻ってしまったが、彼女の心には安らぎが残った。次回作ではイーヴィの蚕片が語られるらしい。
彼女に何があったのか気になる。
Posted by ブクログ
――
真実ではない。それだけ。
けれど真実が常に自分の手の中にあるなんて
そんな恐ろしい人生を送ってきたのかい? 君は。
軽い気持ちで読み進めてたら思った以上にはまった。
ひとつのセンセーショナルな殺人事件を軸に、臨床心理士サイラス・ヘイヴンと、養護施設で暮らす“嘘を見抜ける少女”イーヴィ・コーマックの視点から犯罪を描くのだけれど、主要なテーマはどちらかというとこのふたりの不器用な? うーん、言葉選びが難しいけれど不具合な? 関係の生成の過程にある。というか事件よりそっちに夢中。
主題の殺人事件よりももっとセンセーショナルな過去を抱えるティーンエージャーであるイーヴィと、同じくきっとセンセーショナルだったに違いない事件でまともなティーンエイジを過ごせなかったサイラスが、奇妙に繋がっていく。
職業的にも、そしてキャラクタ的にも多分に分析的なサイラスと、欺瞞に満ちた(そのぶん世に溢れている)ワイドショーじみた分析なんてその能力で反則的に乗り越えて鼻で笑ってしまうイーヴィという、コンビとしては不倶戴天なふたりの縺れが魅力的。
翻訳ものによくあるタイトル問題。今回は原題のが好きか…と思ったけれど最後まで読んでみると、邦訳のほうが核心を突いているようにも思えた。
筆致は軽くていかにも海外TVシリーズ、という感じなので、上下巻と構えずさらりと読めると思います。
今回は邂逅編とでも云おうか、シリーズも序盤。
今後が楽しみ、というのも含めて、控えめに☆3.4